トルコから二つの気になる情報が、伝わってきている。一つは、与党AKPの支持が大分下がってきている、という内容だ。そして、もう一つの情報はカラ検察官が、エルドアン大統領を真正面から攻撃する形で、汚職事件について語っていることだ。
与党AKPが汚職発覚以来、そしてエルドアン大統領の公邸建設などに絡む大散財、インフレの高進、失業率の上昇などで、国民の支持を落としてきているようだ。それでもエルドアン大統領は、全く気にすることなく、最近では『私こそが国家であり、スルタンだ。』と公言してはばからない。
こうしたエルドアン大統領の言動は、トルコを民主国家から独裁国家(権威主義国家)にしていくものだとして、欧米から非難の声が上がり始めている。EUの議員などは、トルコの最近の政治は、EU加盟に近づくものではなく、逆に遠ざかるものだということを、あからさまに語っている。
そうしたEUからの非難について、エルドアン大統領は『ロシアや中国と組めばいい。:』とでも考えているのであろうか。全く動じる気配はないようだ。そのあたりのことはロシアもわかっていて、事あるごとにトルコとの関係緊密化を口にしている。ガス・パイプ・ラインのトルコ通過計画などは、まさにその典型であろう。
もう一つのトルコに関する情報は、カラ検事が汚職事件について、トルコのジュムフリッイェト新聞と、ブギュン紙とのインタビューで、相当突っ込んだ発言をしたことだ。その発言内容はショッキングとも言えるものであり、『汚職事件で最も悪いのはエルドアン大統領だ。』と語ったことだ。
カラ検事の語るところによれば、エルドアン大統領は初めのうちは汚職に絡んでいなかったが、次第にはまっていったということのようだ。これはイラン人ビジネスマンの、ザアレブ氏の工作によるものだ。
それはザアレブ氏の家族が、トルコ国籍をとることに絡んで、はめられたようだ。100万ドルの賄賂がエルドアン大統領に贈られたのだ。そして、エルドアン大統領の子息ビラール氏が理事を務める、TURGEV (青年教育財団)に対する寄付もそれだ。
その他にも、エルドアン大統領名義で贈られたラマダン月の貧者への贈り物は、ザアレブ氏の金で行われたものだったということだ。
これらの秘密情報をカラ検事が暴露できたのは、それなりの準備がなされたからであろう。汚職にかかわる検事調書や資料は、すでに何組もコピーがとられ、しかるべき人たちの手に、渡っていることであろう。
いまトルコではマスコミはすべて、エルドアン大統領のコントロール下にあるといわれているが、そうしたなかで2紙がカラ検事のインタビューを掲載したということは、エルドアン大統領の締め付けに、ゆるみが生じてきていることを意味しているのではないのか。