『ヨルダンの不安と苦悩』

2015年1月23日

 

ヨルダン政府はいま、大きな問題を抱え込んでいる。それは隣国シリアの状況が、影響しているのだ。加えて、ヨルダン川西岸地区のパレスチナの問題も、今後ヨルダンが直面する、大きな課題となるであろう。

  まずシリア問題だが、ヨルダンは大量の避難民を受け入れており、彼らに対する人道的支援の費用は、膨大な額になっているものと思われる。住居用テントに始まり、食料から水、電気や石油、そして医療支援もしなければならないからだ。

 加えて、この難民に仕事とを与えることも、考慮しなければならない。一家の大黒柱が仕事のない状態になることは、家族のなかの若い女性が、非合法な仕事をせざるを得なくなるということだ。幼い年齢で湾岸の老人たちに、臨時婚をさせられるという形で、実質的には売春させられている、少女たちもいるのだ。

  そうしたことに加え、最近ではシリアから武器が、密輸されるようになってきているのだ。しかも、その量は相当なようで、国境でうまくヨルダン側の治安部が、捕まえたケースも幾つかある。もちろん、ヨルダン側の治安部に捕まらずに、うまく持ち込んだ武器も、相当量あるということであろう。

  加えて、シリア側から犯罪集団やテロリストが、侵入してくることに対しても、ヨルダンは対応しなければならない。彼らが侵入してきて、しかるべき状態が整えば、当然のこととして、ヨルダン国内の治安は、不安定なものとなろう。

 ヨルダンとシリアとの国境は370キロメートルあり、この国境を完全に防御することは、ヨルダン政府には不可能であろう。サウジアラビアやイスラエル、エジプトなどは国境に長大なフェンスを構築しているが、その費用は大変な額となろう。地下資源に恵まれないヨルダンには、到底できないことだ。

 パレスチナについても、ヨルダンは頭を痛めている。ヨルダン川西岸では、ハマースの影響もあってか、あるいはフラストレーションがたまってきている関係か次第に、パレスチナ人によるイスラエル側に対する、過激な行動が目立ってきている。

 そのことは、ヨルダン川西岸地区から追放される、あるいはイスラエルの逮捕から逃れるために、ヨルダンに逃れてくる、パレスチナ人の数が増加するということだ。この場合はパレスチナ人のなかに、ヨルダン国籍を有しているものが多数いることから、入国を拒否することは難しい。

 しかも、現在では完全にヨルダン国内のパレスチナ人の数の方が、ネイテイブなヨルダン人よりも、多くなっていることから、安易な厳しい対応を取ることは、国内が混乱することに繋がる危険性が、あるということだ。シリアから持ち込まれる武器、シリアから侵入してくるテロリストや犯罪人、そしてヨルダン川西岸地区から入ってくる、パレスチナ人が連結すると、ヨルダンは極めて危険な状況に、なるということだ。