一時期は、アメリカがシリアのアサド体制に終止符を打つ、と豪語していたオバマ大統領の考えが、最近大分変わってきたようだ。イラクシリアでの残虐なIS(ISIL)の行動が伝えられるなかで、オバマ大統領は何時しか、シリアと軍事協力するようになってきていた。
アメリカがいまシリアで行っている軍事作戦は、シリアの体制打倒のためのものではなく、シリアの体制を打倒しようとしている、IS(ISIL)を打倒するか弱体化させるものなのだ。
アメリカのケリー国務長官の発言からも、最近ではアサド大統領の辞任や、体制の打倒ではなく、国民中心の政策に変更すべきだ、というあいまいなものに変わってきている。
このアメリカの立場の変化は、述べるまでもなく、ヨーロッパ諸国に歓迎されているようだ。シリアの旧宗主国であるフランスは、アサド大統領がどのような人物であれ、戦闘のなかで多くの歴史的建物が、破壊されていくことは、看過できまい。
大分早い段階で、反シリアの軍人のなかから、シリア軍に復帰する者が出ているとお伝えしたが、最近ではますますその傾向が、強くなってきているのではなかろうか。
シリアはイラクと同様に、多民族多宗教国家であり、ある程度の強権を発動しないことには、国内はまとまらず、国民同士の対立が繰り返されるからだ。その点では父アサド大統領よりも穏健な、息子のバッシャール・アサド現大統領の方が、その役に向いていると言えるのではないか。
そのことについて、一番正確な判断をしていたのは、他ならぬシリア国民のようだ。彼らの多数は、アサド体制の方が国内がまとまりやすい、と判断していたからこそ、アサド大統領を支持してきたのであろう。
他方、反アサド側の各組織は、結局纏まることが出来ず、決定的な展開ができないままに、4年の歳月が流れ去った。そうなると、反アサド側から離脱する者が出ても当然であり、実際に何人かの主要な軍人が、すでに組織を離れ、シリアの体制側に復帰している。
結果的に、オバマ大統領はシリアから、次第に手を引くことになろうし、残されたISもシリアから離れる時期が、近付いているのではないか。その転換期には、オバマ大統領はロシアとイランに、シリアという複雑な問題を、投げ出すのかもしれない。