イラクはアラブ諸国のなかにあって、シリアと同様にイランとの、特別な関係を有している国だ。それは、イラク国民の60パーセント以上が、イランと同じシーア派イスラム教徒であることに起因している。
そして、イラクのカルバラやナジャフは、シーア派イスラム教徒にとっては聖地であり、イランから毎年多数の巡礼者が、この地を訪れているのだ。イランのシーア派イスラム教徒は、カルバラやナジャフの川の泥でできた、タイル状のものを使って、それに額を当てるようにして礼拝している。
シーア派がイラクの国民の、多数を占めているということは、シーア派の高僧も存在するということであり、イラクにはアヤトラ位のシーア派イスラム学者がいる。シスター二師はその一人だが、彼はイランからも一目置かれる存在の人物なのだ。
イラクのマリキ―前首相は、イランと特別な関係にあったが、現在のアバデイ首相も、やはり特別な関係にあるのであろう。このアバデイ首相が最近重要な発言をしている。彼に言わせると、『アメリカとイランとの関係は、近く大きく改善するだろう。』ということのようだ。
彼が語るところによれば、3~4か月前まではイラン側の要人との会談の中で、アメリカとの関係改善の話は、全く出なかったが、ここにきて急遽関係が改善している、ということのようだ。イラン側はアメリカとの関係改善を望んでいるが、アメリカ政府も真剣にイランとの関係改善を望んでおり、一定の合意に達したいということだ。このアバデイ首相の発言は、アルハヤート紙とのインタビューのなかで語られたものだ。
アバデイ首相はこのほかに、IS(ISIL)とイラク軍との問題に触れ、イラク軍はまだ十分にIS(ISIL)と戦うレベルにはなく、そうするためには何千人もの若者を、軍隊に入れる必要があると語っている。
また、IS()ISIL)の幹部については、バグダーデイはいまイラク国内ではなく、シリア国内に留まっており、旧サダム体制のナンバー2であり、現在IS(ISIL)の重要人物の一人であるイッザト・ドーリ氏も、イラク国内にはおらず、他の国(シリアとは明示していない)に留まっていると語った。
この二人のIS(ISIL)の要人が、イラクを離れているということの持つ意味は、極めて大きいのではないか。つまり、IS(ISIL)にとって、既にイラクは関心の対象ではなくなった、ということではないのか。
アメリカ・イラン関係に、大きな変化がありそうだ、IS(ISIL)の動きに変化が出てきているということは、今後の動向を占うカギになるのではないか。