トルコのエルドアン大統領は昨年8月、遂に大統領に就任し、首相の公邸を奪い自分の城にし、そこに収まった。そのエルドアン大統領の城には、1150の部屋があり地下室を加えると、5000の部屋があるといわれている。しかも、そのなかにはカナダ製の特別な金庫のような部屋が、幾つか用意されているということのようだ。
問題はこの大豪邸で最近始まったセレモニーが、何を意味しているかだ。先日パレスチナ自治政府のマハムード・アッバース議長が、トルコを訪問した際にエルドアン大統領と会っているが、エルドアン大統領は高い階段から降りてきて、マハムード・アッバース議長に会っている。
その高い階段の脇には、左右8人ずつの兵士が並んでいた。その兵士の服装がオスマン帝国時代のものであり、荘厳な感じのものとなっている。もし、エルドアン大統領がオスマン帝国のスルタンの服装でもしていれば、映画のシーンではないか、と思うほどだった。
一体、エルドアン大統領は何を考えて、このようなことを始めたのであろうか。加えて、エルドアン大統領はトルコ軍の徽章を、新しいものにするつもりのようだ。それを見るとやはりオスマン帝国時代のものに、極めて近いデザインとなっている。
エルドアン大統領のヨーロッパに対する強気の発言や、アメリカの立場を無視したIS(ISIL)対応での非協力的な姿勢、そしてイスラエルのネタニヤフ首相に対する暴言は、彼がオスマン帝国のスルタンになった、という錯覚を抱いているからこそ、出るものだと言えるのではないのか。
しかし、錯覚は錯覚であり、それは一時の夢に過ぎない。オスマン帝国が滅びていくとき、同国の経済は相当悪化していた。しかし、大オスマン帝国の夢が、その現実をスルタンには伝えなかったのであろう。
いまトルコの経済は次第に悪化しているし、国民はインフレに泣いている。トルコ・リラの下落もトルコ経済には、決して役に立っていない。輸入物価を引き上げているだけなのだ。歴史は繰り返されるものなのであろう。その歴史の繰り返しが早まるか否かは、指導者の資質によるのではないか。