今年の6月には、トルコで国会議員選挙が行われるが、与党AKPはその選挙に向けて、劇薬を使い始めたようだ。何処の国でもそうだが、外国が自国の国益を侵している、というフレーズは無条件に、支持を受ける場合がある。
トルコも例外ではない。与党AKPは選挙に向けて、エルドアン大統領を始めとして、欧米諸国やイスラエル・ユダヤ人を敵に回す、言辞を増やしているし、マスコミにもそのように、働きかけているようだ。
その際たるものは、2013年の12月から始まった、政府要人とその家族による汚職問題は、外国の仕掛けた罠だというのだ。述べるまでも無く、その先頭に非難されているのはアメリカだ。アメリカの在トルコ大使は、トルコ政府の非難を受けて、辞任するに至っている。
リカルドーネ大使はトルコのハルク・バンクと、イランとの結びつきは、結果的にトルコを窮地に立てることになるので、関係を絶つべきだ、と語ったというのだ。
この発言がそのとおりなのであれば、極めて好意的な内容ということになる。アメリカ大使がこのような発言をした頃には、アメリカ政府内でトルコのイランとの関係に、問題があるという認識が、高まっていたのではないのか。
リカルドーネ大使は辞任後ワシントンで講演し、アメリカや西側の国々を敵に回す発言は、危険なものだと語っている。それは無知なトルコ国民が、エルドアン大統領の主張をそのまま信じ込み、反欧米に回ることに繋がるからだ。
そもそも、与党AKPがこのような作戦を展開するのは、AKPがイスラム思想に強い影響を受けていることにある、とトルコのマスコミは指摘している。確かに、エルドアン大統領がAKP結成前に所属していたのは、リファー党などイスラム主義に政党だった。
エルドアン大統領はネタニヤフ首相についても、自由な思想・表現の自由と言いながら、イスラムの脅威を煽ったと非難している。またガザ戦争で多数のパレスチナ人が死亡したのは、イスラエル軍の攻撃によるものだとし、ネタニヤフ首相をテロリストとも非難している。それはアメリカ政府の怒りも買った。
エルドアン大統領はイスラエルやネタニヤフ首相、そしてアメリカを始めとする西側諸国に対する非難が、単なる選挙の道具であり、特別な制裁を受けることは無い、と考えているのであろうか。
そうだとすれば、あまりにもナイーブな考えではないか。あるいは、エルドアン大統領はEU入りを断念し、上海フアイブに乗り換えて、そちらに参加するというのだろうか。