トルコの首都アンカラの市長といえば、閣僚と同格かそれ以上であろう。つまり、トルコの政界にあっては、アンカラ市長は押しも押されぬ人物、ということだ。そういう立場の人物が発言する、言葉の意味は重いはずだ。
ところが、ちょっと常識では考えられないような発言を、アンカラ市長がしたのだ。その裏にはしかるべき意図がある、と考えていいのではないだろうか。
アンカラ市長のギョクチェク氏は、パリで起こった雑誌社襲撃事件や、ユダヤ人経営のスーパー・マーケット襲撃事件は、フランスがパレスチナ支持に回ることが原因で、事件の背後にはイスラエルのモサッドがいると語ったのだ。
アンカラ市長は与党AKP の重鎮であろうから、彼はエルドアン大統領やダウトール首相らと頻繁員同席し、情報や意見を交換しているはずだ。つまり、そのことを考慮すると、ギョクチェク氏の意見は、単に彼だけの考えではなく、トルコ政府要人の共通認識、ということになるのではないのか。
彼に言わせると、フランス議会はパレスチナについて、国連と同じ立場に立とうと思っていた。つまり、国家としてパレスチナを承認する方向にあった。
イスラエルはこのフランスの立場が、ヨーロッパ全域に拡大することを懸念していた。そこでイスラエルのモサッドは、イスラムフォビアをあおるために、今回の事件を起こしたというのだ。
実際には、イスラエルやユダヤ教徒ではなくてフランスでは、イスラム教徒やモスクが攻撃対象になっており、銃弾が撃ち込まれたり、放火されているというのだ、しかも、その件数はパリで事件が起こる以前に、既に、50件以上に達しているということのようだ。
ギョクチェク市長はトルコで起こった、奇妙な出来事にも触れ、アンカラに通じる道に黒い氷が散乱し、交通事故が100件以上も起こった、と語ってもいる。
このギョクチェク市長の発言は、今後少なからぬ影響を、トルコとイスラエルとの関係に、及ぼすものと思われる。
このギヨクチェク市長の発言と、関連するか否かは別にして、エルドアン大統領はテロ国家のイスラエル首相が、パリのデモに参加するのはおかしい、と非難している。
実際にイスラエルのネタニヤフ首相は、デモへの参加を止めるよう、フランス政府から要請されていたのだが、強引に参加したようだ。オランド大統領はネタニヤフ首相と会ったとき、いやいやながら握手をしているという感じであり、他方、ネタニヤフ首相は必死で彼の手を握っている、という印象の写真が、マスコミで紹介されている。