『リビアではコプト教徒が受難』

2015年1月 4日

 IS(ISIL)の犯行と断定は出来ないが、IS(ISIL)によるエジプト人コプト教徒に対する、殺害がリビアで起こっている。これはアンサール・シャリーアと呼ばれる組織の犯行だが、アンサール・シャリーア組織はIS(ISIL)に対してバイア(追従の宣誓)を行った組織だ。したがって、今回の犯行はIS(ISIL)の犯行、とみなしていいだろう。

 アンサール・シャリーアは主に、リビア東部で活動し、ベンガジを拠点としていたが、最近ではリビア正規軍やハフタル軍によって、ベンガジからほぼ追放されたようだ。

 エジプト人のコプト教徒が狙われるようになった理由といては、エジプト政府によるハフタル軍やリビア政府への、支援があるからだといわれている。この組織は2011年に殺害された、カダフィ大佐支持の組織だ、とも言われている。

 今回のアンサール・シャリーアによる犯行は、13日の午前230分に、15人の武装メンバーが4台の車に分乗して、シルテの街に入り、住宅を次々と襲い、身分証明書の提示を求め、コプト教徒と分かると逮捕し、連行したというものだ。なお、連行されたのは13人で、全員が男性だったといわれている。

 これまでに、リビアでは今回の事件以外にも、コプト教徒が狙われるというケースがあった。例えば、昨年12月にシルテで、コプト教徒の医師宅が襲撃され、妻と娘が殺害されているし、シルテから逃れようとしたコプト教徒が、アンサール・シャリーアの検問で逮捕され、連れ去られてもいる。

 昨年の3月には、リビア第二の都市ベンガジで、7人のコプト教徒が殺害され、死体が発見されている。2013年にもベンガジでコプト教徒が集められ、殺害されるという事件が起こっている。

 エジプト政府はいまのところ、打つ手が無いようだ。リビアのエジプト大使館は、大使館に対する襲撃事件なども起こり、現在閉鎖されたままになっている。エジプイト政府としては軍をリビアに送って、コプト教徒を救済することも、ままならないのであろう。

 アンサール・シャリーア組織は正式なIS(ISIL)のメンバーとみなすべきなのか否か、意見の分かれるところであろう。ただアルカーイダについては、初期の組織に追従する形(バイア)で、マグレブのアルカーイダやアラビア半島のアルカーイダ、イラクのアルカーイダ組織などが誕生し、後に一体とみなされているわけであるから、IS(ISIL)の場合もバイアを行った組織は、IS(ISIL)の一部とみなされるようになるであろう。