トルコとIS(ISIL)との関係は、表面には出ていないが、お互いに邪魔しない無言の良好な関係にある、と言ってもいいのではないかと思われる。それはこれ迄の間、IS(ISIL)が必要とする戦闘員や武器や資金が、どうもトルコを経由して、IS(ISIL)の手に渡っていたようだからだ。
したがって、これまでトルコは大きな被害を、IS(ISIL)から受けることは無かったし、たとえあっても、意外にスムーズに解決することが出来てきている。たとえば、イラクのモースルのトルコ領事館がIS(ISIL)によって支配されたとき、48人の外交官や警備員が人質となったが、長期にわたる人質期間にもかかわらず、彼らは極めて健康な状態で、釈放されている。
その後、比較的最近に起こったのは、トルコの軍人が密輸取り締まりや、麻薬取り締まりなどを目的として、シリア領内に入りISI(ISIL)によって、取り押さえられたことがあった。しかしこの場合も、トルコの軍人は難なく釈放されている。
だが、トルコとIS(ISIL)との間では、いまだに解決されないままに、11か月が経過した、重要な問題がある。それはシリア領土内にある、トルコ領土のスレイマン大帝廟に関するものだ。
このスレイマン大帝廟はシリア領土内にあるのだが、トルコが自国の領土として、現在なお領有し、軍人を派遣しガードさせているのだ。このスレイマン大帝廟は現在、IS(ISIL)によって包囲されている。
このため通常は2~3か月で、ガードの兵士が交代になるのだが、それが出来ないでいるし、トルコから食料や水の補給もできないでいる。もちろん、トルコ政府に代わり、IS(ISIL)が食料と水を、トルコのガード兵士に供給してはいるが。
このスレイマン大帝廟の問題が放置されている、と報じたのはデミル氏という、トルコ人のジャーナリストだ。
デミル氏はこれ以外にも、実はトルコでは、大型のテロ計画が3件あったが、それを政府が未然に阻止したことを伝えている。1件はIS(ISIL)によるものであり、他の2件はアルカーイダによるものだったということだ。
デミル氏はこのことに加え、トルコのなかには2万人のIS(ISIL)支持者が、シリアとの国境から侵入していると指摘している。また1万人の外人戦闘員がトルコの領土を通過して、シリアやイラクに向かっていることも指摘している。その戦闘員たちが、ドイツ、フランス、イギリスなどのパスポートを所持していたということだ。
エルドアン大統領の特別顧問である、イブラヒム・カルン氏は今までの段階では、トルコ兵が危害を受けるような状態は、生まれていないと楽観的だ。しかし、トルコもシリアやイラクほどではないが、レベルではないにしても、今後危険の度合いが上がっていくのではないかと思われる。