『亀裂が見え始めたか、トルコIS(ISIL)関係』

2015年1月 8日

 

 トルコがIS(ISIL)を支援している、というのが専門家の間での、常識的認識になっている。昨年には、2000台のトラックに満載した武器弾薬が、トルコからIS(ISIL)に向けて送られた、という情報もあった。

それがばれたのは、トルコとシリアの国境地帯で、トルコ側の警察がその車を止めたことから始まった。警察はシリアへの搬送を阻止しようとしたが、MIT(トルコ情報部)からの命令で通過させられ、武器弾薬はIS(ISIL)に向けて、送り出されたというものだった。

つまり、トルコとIS(ISIL)との関係は、すこぶる良好だというのが、いままでの認識だったのだが、最近になって、その関係に陰りが見え始めている。トルコの国境警備兵がシリア国内に侵入して、IS(ISIL)につかまった、という情報が流れ始めた。

このトルコ兵はトルコを経由して、IS(ISIL)の部隊に参加する戦闘員を追いかけて、それを阻止しようとしていた。それに合わせて、密輸業者たちを捕まえてもいた。これまでのトルコ側の報道によれば、この兵士らの活動で、70人の外人戦闘員が、シリア入りを果たせなくなったということだ。

また、IS(ISIL)から抜け出そうとしている戦闘員が、トルコ南東部の警察署に、逃げ込むということも起こっている。

トルコの一般人46人がIS(ISIL)によって、人質に取られるという事件も起こっている。この人質たちはその後、イギリス人を含む180人のIS(ISIL)側の、メンバーの釈放と交換で、トルコに戻っているということのようだ。

最近では、欧米諸国がトルコとIS(ISIL)との関係に疑問を抱き、トルコ政府を非難し始めてもいる。多くの記事が、トルコとIS(ISIL)との結び付きについて書いてもいる。そうしたこともあり、トルコ政府はIS(ISIL)に対する対応を、変えているのかもしれない。

他方、IS(ISIL)側はトルコを撤退の場所とは限定しない方向で、動き出しているのではないかと思われる。それはIS(ISIL)がレバノンでの作戦を、多く展開するようになったことによる。つまり、トルコだけではなくレバノンを、IS(ISIL)メンバーの逃亡地点と、考え始めているのではないかということだ。

もちろん、IS'ISIL)は逃亡の拠点としてではなく、国家として規模の小さいレバノンを、牛耳ることにより、本格的なIS(イスラム国家)を創立しよう、としているのかもしれない。もし、その推測が的を射ているのであれば、それはトルコにとっては、極めて好都合なことであろう。

IS(ISIL)の逃亡拠点として、トルコが限定的に選ばれた場合、トルコの南東部のクルド人やPKKの戦闘員と、IS(ISIL)の戦闘員との戦闘が、予測されるからだ。そうなれば、戦闘はトルコ南東部にとどまらず、他のトルコの地域にも、拡大する危険性があろう。