ちょっと日本人の常識からすると納得がいかないのだが、現在リビアには二つの政府が並立している。第一の政府が反対派によって、首都トリポリから追放され、今ではリビア東部のトブルクに、政府施設を移転したのだ。
その政府が活発に国内外活動を展開しているため、首都トリポリの政府施設を占領して設立された第二政府は、外国からの認知がなされていない。トリポリにあった外国の大使館は、治安上の理由からほとんどが閉鎖され、活動停止の状態になっている。
トリポリ政府のハーシ首相がどんなに呼びかけても、外国の外交官は戻ってくれないばかりか、リビア問題を巡る国際会議にも、トリポリの第二政府は招待されないのだ。国際会議では常に、第一政府シンニー首相側だけが、招待されている。
それは無理からぬことだ。ハーシ首相は外国のジャーナリストとのインタビューで、リビアのアンサール・シャリーアという、イスラム原理主義の組織を支持する、と発言しているのだ。それは当然であろう。ハーシ首相もその一派なのだから。しかも、その裏には ムスリム同胞団が構えているのだ。
ここにきて、ハーシ首相率いる第二政府は、難しい問題を幾つも抱え込むようになっている。第一の問題はアメリカやフランスの支援で、第一政府が軍事的に優位に立っていることと、本格的な攻撃が始まる、という不安が高まっているのだ。現在の状況では第二政府側が相当不利になることが、予想される。すでにアメリカ軍は第一政府への支援体制を、アルジェリア政府との間で交渉しているのだ。
第二の問題は第二政府にとって、資金的枯渇が生じる可能性が、高くなってきていることだ。油田地帯や石油の積み出し港の占拠を試みるのだが、どうもうまくいっていない。それは第一政府の方が、軍事力を増強で来ているからだ。
エジプトのムスリム同胞団政府が、シーシ国防相によって打倒され消え去ったが、その後のシーシ政権に対しては、サウジアラビアやアラブ首長国連邦などが、全面支援に乗り出している。 ムスリム同胞団政権の時代には、モルシー大統領が湾岸諸国を訪問しても、これらの国々は、びた一文出そうとしなかったのだ。
シーシ政権が誕生するとこれら3国は、そろってムスリム同胞団メンバーの追放を始めてもいる。こうした中東諸国の政治的流れの中では、リビアの第二政府がイスラム原理 主義と連帯すると言い、母体がムスリム同胞団だとあっては、国際的に孤立せざるを得まい。
リビアの第二政府が国際的孤立を深め、自然消滅していくのがリビア国民にとっては、一番いい選択肢であろう。そうでなければ、アメリカとフランスが、直接間接軍事介入してくる懸念が高いのだ。こうした事情から、そう簡単ではあるまいが、あえて第二政府の滅亡を期待する。