カタールに居住して60年以上の歳月が経過し、イスラム世界で著名になったエジプト人イスラム学者ユーセフ・カルダーウイ師が、インターポールのお尋ね者になった。
彼は世界イスラム学者会議のトップであり、彼に対する対応は、極めて困難なものであろう。ユーセフ・カルダーウイ師はカタールのアルジャズーラ・テレビで番組を持っており、毎週彼が行う説教には、多くの視聴者がいる。
ユーセフ・カルダーウイ師が今回エジプト政府の要請で、インターポールのお尋ね者になったのには、それなりの理由がある。彼がアラブの春革命以前も、その最中も、その後も、エジプト人を始めとした、ムスリム同胞団員に対して、過激な指導を行っていたからだ。
彼の発言は大きな影響力を持っていたのだ。そのため、エジプト政府はユーセフ・カルダーウイ師が革命時に、ムスリム同胞団員をそそのかして実行させた、挑発行為、殺人、破壊行為に責任があるとしている。
エジプト政府はユーセフ・カルダーウイ師を始めとする、ムスリム同胞団幹部の、カタール滞在にクレームをつけ、引き渡すよう要求してきている。その甲斐あり、一部のムスリム同胞団幹部は、既にカタールを逃れ、トルコに移り住んでいる。
エジプト政府はユーセフ・カルダーウイ師に対し、暴力行為の挑発、破壊行為、殺人、エジプト刑務所からの受刑者逃亡、放火などの罪を並べ、追い込んでいる。アラブの春革命時に、ムスリム同胞団員が刑務所を破壊し、多くのムスリム同胞団メンバーと、一般の凶悪犯罪者を脱獄させているし、その後、彼らをシナイ半島北部に、移り住ませてもいる。
その脱獄者たちを核にして、いまアンサール・ベイト・ル・マクデスという名のテロ組織がシナイ半島北部に誕生し、エジプト軍に対抗して戦っているのだ。このムスリム同胞団による犯罪行為は、ムスリム同胞団のメンバーであるモルシー氏が大統領任期中に、相当大掛かりに進められていた。密輸の武器購入とアンサール・ベイと・ル・マクデスへの供与や、国家資金のシナイへの移送も、行われていたといいうことだ。
いずれの国でも宗教指導者が、その信者に与える影響は大きく、指導者が間違った考え方をすると、宗教集団は大きな犯罪集団に、変貌してしまう危険性がある。いま世界的に問題になっているIS(ISIL)も、その一つであろう。