9日間の外国出張を終えて帰国すると、IS(ISIL)が窮地に立ち始めていることが明らかになってきた。イラクでは目立って防戦に追われ、イラク軍やクルドのペシュメルガ軍の対応に、苦慮しているようだ。
カイロ訪問中に、日本のテレビがどうしてもインタビューしたい、というので応じたが、その中でのメイン・テーマは、IS(ISIL)の実力はどれほどのものなのか、どこまで持つのかということだったと思う。
以前からこのブログで 書いてきたように、インタビューではIS(ISIL)の実力はアメリカ軍の空爆で、大分低下している。石油がもうほとんど売れなくなっているから、軍資金が不足しているだろう、といったことを話した。
奴隷として売り飛ばす予定だった、女性たちの維持が大変になり、大安売りを始めたこと、IS(ISIL)内部で汚職にかかわり、処刑される幹部が出ていること。IS(SIL)から抜け出そうとして処刑されたり、投獄されたりする者が出ていること、なども話した。
今回帰国してみると、イラクのシンジャルやその他の街で、IS(ISIL)が追い込まれ、逃亡を始めていることと、シリア国境地帯がクルドのペシュメルガ軍によって制圧された、という情報が流されていた。
主な戦略拠点をイラクからクルドに移す、という情報も流れているが、それはシリアからトルコに逃げ出す、準備ではないのか。これまで、IS(ISIL)を使ってクルドを撲滅しよう、と考えていたエルドアン大統領は、これから付けを払わされることになるだろう。
IS(ISIL)が追い込まれて、イラクやシリアから逃げ出すとなれば、行き先はトルコしかない。しかも、通過地点はほとんどの住民が、クルド人であるトルコの南東部だ。そうなれば、トルコのクルド人たちは、IS(ISIL)が攻撃を加えた、シリアのコバネのクルド人攻撃に対する、報復戦を始めるのではないか。
もちろん、その場合はPKK(クルド労働党)の戦闘員たちが、しかるべき主導的な役割を戦闘の場で果たそう。そのことは、非PKKのクルド人の若者たちが、PKK入りしていくことを意味しよう。
エルドアン大統領はイラクやシリアの内乱で儲けようとして、結果的には高い付けを払わされる、ということではないのか。今後トルコ国内が危険になっていく、と予測するトルコの友人たちは少なくなかった。そのことは経済の悪化も含んでいよう。戦場には誰も投資しようとは、考えないのだから。