IS(ISIL)とシリアやイラク、クルドのペシュメルガ、そしてアメリカの戦争に、どうやらケリが付き始めたようだ。以前から指摘してきたが、最近IS(ISIL)による攻撃や殺戮は、部族員(一般市民)や婦女子が多く、シリア軍やイラクの軍、そしてクルドのペシュメルガとの、戦闘によるものではなかった。
つまり、IS(ISIL)側はある時期から、シリア・イラクの正規軍との戦闘は、極めて不利だということが分り、弱小者を狙い、出来るだけ残酷な殺し方をすることによって、敵側に恐怖を与えるという、作戦に切り替えたようだ。
他方、シリア軍やイラク軍、そしてクルドのペシュメルガが、勇敢に戦うようになった裏には、IS(ISIL)の犯した、アラブとの紛争における、基本的な過ちがあったからだ。それはアラブを激怒させる『女』『金』『宗教』を巡り、IS(ISIL)が誤った対応をしたためだ。その結果、アラブ人(シリア軍人イラク軍人ペシュメルガ)が本気で怒りだし、対抗するようになったのだ。
そうなると世界中から集めた、ジハーデストなる寄せ集めのIS(ISIL)の戦闘員は、正規の軍隊の指導を受けていないため、戦闘において極めて不利になるということだ。それがじわじわとここにきて、効いてきているのであろう。しかも、アメリカを始めとする連合側が、空から空爆もしているのだ。
結果的に、小規模化、貧発化したIS(ISIL)の戦闘は、シリア軍やイラク軍だけでも、十分に対応可能になってきている。そのことを冷静に判断したイランのロウハーニ大統領は、『シリアが勝利した』とシリアのワリード・ムアッリム外相の、テヘラン訪問時に賞賛している。
ロウハーニ大統領はシリアがいまは、自国の力で十分にテロ対策ができるし、国家の治安を守ることも、出来るようになったと評価している。
同様の判断がアメリカ側からも出ている。アメリカのヘーゲル国防長官(国防相)はイラク訪問時に、イラクの現在の状況について、『IS(ISIL)との戦争は、段階的に対応が出来るようになってきた。』と語り、イラク軍が十分に対応できるように、なってきていることを示唆した。
しかし、まだ当分の間はアメリカ軍による、空爆が必要だとも語っている。イラク軍も自信を持ち始めているのであろう。外相や首相が外国軍の駐留の必要はないと語り、イラクに今必要なものは、武器だとも語っている。
IS(ISIL)は資金難とそのことから来る、戦闘員の戦闘意欲の低下、IS(ISIL)内部の汚職などで、崩れ始めているのであろう。考えようによっては、IS(ISIL)のイラクとシリアにおける役割は、ほぼ終了してもいる。そろそろ芝居の幕は引き時なのかもしれない。