リビアはついに、陸の孤島になってしまったのかもしれない。首都トリポリで使用可能だったマテーガ空軍基地も、攻撃を受けて使用不能になったようだ。もちろん滑走路を修理すれば可能だろうが、当分は使えないのではないのか。
現在トリポリを支配しているのは、国際的に認められているリビア東部にある政府ではなく、ミスラタ組のイスラミスト政府だ。オマル・ハーシが首相を名乗っているが、どれだけの統治能力があるのか、イスラム勢力の閣僚や国家公務員のレベルがどうなのか疑問だ。
リビアには人材がいない。カダフィ時代に完全に高等教育を否定する、愚民政策がとられたために、高度な教育を受けたのは50歳以上の高齢者ばかりだ。そうであるがゆえに、リビアで反カダフィ革命が起こった時、一番心配だったのは、誰がどうカダフィ後のリビアを、リードしていくかということだった。
結果は暗い予測通りになった。リビアの各部族や政治組織そして宗教組織が、権益を巡って血みどろの戦いを、展開するようになった。エジプトから入り込んだムスリム同胞団はリビア人を抱き込み、リビアではムスリム同胞団が大きな力を持つようになった。
ミスラタ組(リビアの首都トリポリから200キロほど東側にある地中海沿岸の都市)がそのコアになっているのだが、カダフィ時代に輸入された膨大な数の武器が、いまだに山積しており、武力闘争の道具には事欠かない状態にある。
これに対抗するのは、いわゆる世俗派と呼ばれるグループであり、その実際の中心人物はハフタル氏だ。彼は元リビア軍の将校で、チャドに派兵され人質になった後に、アメリカに渡り、そこで20年の間機会が来るのを待たされていた。
そしてリビア革命が始まると、リビアに戻り戦列に加わり、今では世俗は政府の軍の最高のポジションにある。しかも、彼の立場は世俗派の軍のポストではなく、彼のミリシアのトップなのだ。彼は自分のミリシアとリビア軍とを、コントロールしているのだ。
今回トリポリの唯一使用可のであった、空軍基地マテーガ空港を空爆したのは、ハフタル氏の所有する、戦闘機だといわれている。
オマル・ハーシ首相は、敵側は外国の援助を受けており、武器も豊富だと嘆いているがそれは事実だ。ハフタルが参加する世俗派政府には、エジプトやアラブ首長国連邦など、アラブ諸国が支援を送っているのだ。
現在エジプトのシーシ大統領はイタリアを訪問しているが、当初の訪問目的は両国間の経済協力とされていたが、第一の議題はリビア問題をどうするか、ということであろう。事実、イタリアとの間でシーシ大統領は、最初にリビア問題を討議している。
リビア問題はすでにリビア人の手では、解決できない段階に完全に入ったようだ。しかし、この国は石油が豊富であることから、欧米諸国は放ってはおくまい。これから先外国の介入を含め、リビアは再度流血の舞台になるのではないか。