『シリアのアサド大統領は何故権力の座にいるのか』

2014年11月22日

 

 

 2011年以来、もめにもめているシリア国内情勢のなかで、アサド大統領は何故いまだに権力の座に、留まっていられるのか不思議だと思うだろう。チュニジアのベンアリ大統領はあっけなく国外逃亡し、エジプトのムバーラク大統領も最終的には失脚し、リビアのカダフィ大佐は反対派の青年に、拳銃で撃ち殺され最期を遂げた。

 しかし、シリアのアサドの場合は、大掛かりな反体制組織やミリシア組織が出来、しかも外人部隊が大挙して押しかけても、未だに打倒されずに、残存し続けている。アサド大統領に敵対する組織としては、シリア国民が結成したFSA(自由シリア軍)反アサド政治組織のシリア国民連合、アルカーイダの下部機関イスラム原理主義のヌスラ組織、そしてIS(イスラム国家ISIL)などだ。

 それにも関わらず、アサド大統領が権力の座に留まっているのは、他のアラブの春革命の結果が、影響しているということだ。結局は混乱が続き、エジプトの場合は軍人シーシが権力を握った。しかし、未だにどの国も落ち着いてはいない。

 シリアの場合はISISIL)が台頭したことで、この問題を解決するには、多数のアメリカ軍を、派兵しなければならないだろうし、巨額の支援が必要であろう。いまのオバマ大統領には、そのいずれも不可能であろう。

 シリアの指導的立場の人たちは、最近、誰も民主主義を口にしなくなってきている。それよりも国内の治安回復が、優先するからだ。それは、イスラエルにとっても然りであろう。シリア国内が不安定の度を増してゆけば、イスラエルの治安も不安定の度を増すのだ。

 そう考えると、イスラエルにとっては、アサド大統領という人物と彼の体制は、より安全な敵ということになろうし、IS(ISIL)やアルカーイダ系ヌスラのような組織は、危険の度合いを測りえない、組織ということになろう。

 そればかりではない、IS(ISIL)やヌスラのような組織が権力を拡大して行けば行くほど、マイノリテイのアラウイ派国民やキリスト教徒国民などは、シリアから逃げ出さなければなるまいし、もし留まれば虐殺されることを、覚悟しなければなるまい。

そのシリアのマイノリテイを、アメリカはどう保護するのか、ということを考えたとき、アサド大統領が秩序を回復することが、出来るのであれば、その方が楽だということに、なるのではないか。

 最近、オバマ大統領はアサド体制の打倒を考えていない、と言い出している。それはいま述べたような、理由によるのではないのか。アメリカにとってはアフガニスタンとイラクの先例が、あまりにも大きな負担を、アメリカにもたらしたからであろう。私に言わせれば何をいまさらだが。