トルコの地中海に近い地域は冬でも暖かい、と思うだろうがそうではない。冬が始まると突然のように気温は下がり、雪も降るのだ。イスタンブールでも大雪が降り、一冬に何度も交通マヒを起こすことがある。
トルコの南東部も然りであり、乾燥した地域での冷え込みは、骨に刺さるような鋭角の寒さに襲われる。それをアルジェリアの南部の西サハラ難民キャンプで経験したし、カイロでも経験したことがある。
その寒い冬を、シリアからトルコに逃れた難民たちは、どう過ごすのだろうか。シリアからの難民の数は既に160万人を突破しており、トルコ政府はその対応に、巨額の資金を投入しなければならない。
これまでは比較的にトルコ人の優しさが、シリア難民を温かく包んでくれていたのだが、ここまでシリアからの難民が増えると、そうも言ってはいられなくなる。シリア難民の行動が、トルコ人に反難民感情を、生み出すようになっているのだ。
シリア難民は日々の生活のために、あらゆる違法行為を行うように、なってきているのだ。若いシリア女性は売春をし、子供たちや中年以上の女性たちは物乞いを、若者は窃盗をという具合に、路上生活も迷惑な話であろう。
地中海に面して冬も温暖なイズミール市は、ヨーロッパからの観光客が冬になると多数押しかけてくるのだが、彼ら観光客を狙った、すり、物乞い、売春が激増する。それは観光を売り物にしているイズミールにとっては、極めて迷惑な話なのだ。
当然の帰結として、トルコ人が差別発言を、シリア難民に向けることになる。『泥棒』『売春婦』『トラブルメーカー』といった類の罵倒が、シリア難民に向けられるのだ。それを子供たちが真似することは、教育上も良くない。
このシリア難民対策にトルコ政府は、25億ドルを費やしているが、そのうちの23億ドルは、トルコ政府の予算でまかなわれている。このなかには難民の子供たちの教育費も含まれているが、現状では80万人のシリアの子供のうち、14%程度しか学校に通っていないということだ。それは難民キャンプから都市部に移住し、居所不明となっているからだ。トルコ政府は今年中に、何とか全ての難民の登録を済ませたいと思っている。
現状ですらひどい状態なのに、もし、シリアの大都市アレッポがIS(ISIL)の手に落ちることになれば、難民の数は倍以上に膨れあがることであろう。そのときトルコ政府としては、完全にお手上げ状態になる、ということではないのか。
冬は既に始まっている。難民キャンプの人たちに配られる支援物資は、ビニール・シートと冬服だそうだ。食糧や水はどうなるのか、医療サービスはと幾らでも不安は広がる。