クエイトでは日本人には考えられないような、国籍を持たないビドーンと呼ばれる人たちが住んでいる。その数は10万人とも11万人とも言われているが、彼らはクウエイトで石油が発見されてから入国し、居住し始めた人たちか、あるいは彼らの子孫だということのようだ。
当然のことながら、これらビドーン(ビドーンとは無いという意味で、国籍のない人ということだ)は他のクウエイト人と変わらない国籍を付与するよう、これまで交渉を続けてきていた。もちろんそれがデモにもなったり、暴力を伴った場合もあった。
しかし、クウエイト政府は国籍問題で、ビドーンに対し何の妥協もしないで来ていた。それでも34000人のビドーンについては、十分な検討の結果、クウエイト国籍を付与することになった。
クウエイト政府は残るビドーンたちに対しては、東アフリカの海に浮かぶ島コモロ諸島の経済市民の資格を取得するよう働きかけている。つまり、クウエイトの国籍をあきらめて、コモロ国籍を取得しその国民になれと言っているのだ。
クウエイト政府は、ここ数か月クウエイトにコモロ大使館が設立され、経済市民の手続きができるようになるということだ。
クウエイト政府はコモロの経済市民になっても、ビドーンはクウエイト国内に居住することが出来、教育を受ける権利、雇用の権利、医療を受ける権利なども保証されるということだ。
しかし、このクウエイト政府のビドーン対する新たな方針は、一部議員のなかから反発が出ている。ファイサル・アルダワイサン議員は『これはビドーン問題を葬るものだ』と非難している。事実その通りであろう。
何故クウエイト政府はビドーンに国籍を与えないのか、ビドーンは何故クウエイトの国籍にこだわるのかということについては、クウエイト国籍を持つことによる、経済的なメリットが大きいからであろう。
クウエイト国民にはクウエイト国営企業も株が、無償で配分され、株式配当という形で毎年巨額の配当金が配られる。住宅を建てる場合の土地の確保と建築費、教育費、ありとあらゆる面で、クウエイト国民は優遇されているのだ。そのためこれ以上クウエイト国民を、増やしたくないというのがクウエイト政府の本音なのであろう