『コバネで狂いだしたトルコのクルド対策』

2014年11月 3日

 

 トルコにとっていま最も重要な問題は、シリアのコバネにどう対応するかということであろう。もしその対応を間違えれば、トルコ国内のクルド人が反政府デモを、活発化させていくことになるからだ。

 既に、トルコ在住の40人以上のクルド人が、デモで死亡している。トルコ国内のクルドの政党DBPHDPが、コバネのクルド人に連帯するデモを起こし、何万人ものクルド人が参加しているのだ。

 彼らはコバネのクルドを、世界のクルド問題にしようとしている。もちろんクルドのリーダーである、PKKのオジャラン議長も、同様の立場を取っており、トルコ政府はコバネのクルド人を救うべきだと主張し、もしそれが実行されなければ、トルコとの和平交渉は止める、とまで言っているのだ。

 トルコ国内はそのような理由から、大分混沌としてきているが、なかでもクルド人の活動が活発化してきたことが、危機感をあおっている。トルコ南東部はクルド人が多数派を形成しているが、これらの地域ではトルコ政府のコントロールが、効かなくなってきているのだ。

 そのことで南東部のトルコ人住民代表は、政府にきちんとした対応を求めているのだが、なかなかそうも行かないようだ。それはコバネ対応で、政府が多忙であるために、国内のクルド対応に、時間を割けないからだ。加えて、コバネへの対応から、軍も国境地帯に相当数、張り付いた状態だからだ。

 アルンチ副首相やアクドアン副首相、そしてエフカン・アラ内相らが南東部のAKPの代表者らと、会議を持っている。その席上、アルンチ副首相らはトルコ南東部が、クルド人によってコントロールされるような状態は、放置しないと言っている。同時にこのような混乱の中では、選挙の実施が出来ないと語り、まずは法の秩序を実現させることが、優先されると語った。

 トルコ政府は将来に向けて、クルド人居住区を設立するつもりでいるのだが、政府の構想はほとんどクルド住民には、伝わっていないようだ。そのことから起こっている問題を逆手に取り、クルドの政党もPKKのオジャラン議長も、トルコ政府の非難を繰り返している。そしていまトルコでは、政府よりもクルドが事態を動かしていると吹聴している。

 この点については、アクドアン副首相が明確に反論している。政府には明確な方針があり、それを実施している最中だし、それを公表してもいると述べている。しかし、そうした政府の手遅れをついて、PKKはトルコ南東部の諸都市で、活動を活発化させているのも事実だ。その状態について、トルコ政府は南東部の管理を、PKKに任せるのではないか、といぶかる人たちも少なくない。