イラクの元首相で現在副大統領の職にある、マリキー氏はIS(ISIL)が誕生した素地は、サウジアラビアのワハビー主義の思想にあると発言した。この発言はイラク政府の方針とは、少し異なるようだ。
イラクの現政権はマリキー首相の後任である、アバデイ首相がサウジアラビアを訪問し、両国関係の修復を図り始めたところだ。両国間に問題があることは、イラク国内の治安に大きなマイナスになるからだ。
マリキー副大統領はIS(ISIL)のルーツはワハビー主義にあるとし、サウジアラビア、カタール、トルコが、シリアやイラクのテロリストを、支援していると明言した。なかでも、トルコはシリアやイラクの国内問題に、関与しているばかりではなく、エジプトやリビアにも内政干渉しているというのだ。
他方、イランについては賞賛の言葉を寄せている。それは、イランが他国との国境を遵守し、他国への干渉を避けているからだ。
アメリカについては手厳しい発言をしている。アメリカによるIS(ISIL)に対する空爆は、治安回復には役立たない。治安回復にはインテリジェンスと、地上軍の派兵が必要だと語った。したがって、現在アメリカが建てている治安作戦は、失敗に終わるとも語っている。加えて、アメリカの同盟諸国がIS(ISIL)を、支援していることの矛盾も突いている。
確かにそうであろう。いままでサウジアラビアやカタール、そしてトルコがIS(ISIL)や、ヌスラ組織、そして、シリアの反政府組織や戦闘グループを、トルコが支援してきたことは、公然の秘密となっていた。最近になって、サウジアラビアやカタールの支援は、低下したと思われるが、全面的に停止しているわけではなさそうだ。
もう一つの問題は、アメリカとトルコとの、この問題への関与の目的が、異なっている点だ。アメリカはIS(ISIL)の排除(?)を目的としているが、トルコはシリアのアサド体制打倒を目標としている。トルコは同国の目的を達成するためには、IS(ISIL)を使おうと考えているようだ。
イラクについても、トルコ政府はクルド自治区との関係を強化し、大産油地帯であるキルクークを含む、クルド国家の樹立に支援を送っている。それは、イラク中央政府にとっては、認められないことであり、イラク中央政府にとってはトルコが最も危険な存在、ということになろう。
このマリキー副大統領の発言は、イラク政府の意向を代表してのものなのか、あるいはあくまでも、彼個人の考えなのかについては、これからのイラクの動きを見ていかなければ、明らかになるまい。