『リビアで見えるアメリカの本音とISの台頭』

2014年11月28日

 

 どうやら、イラクとシリアでのIS(ISIL)の役割は、ほぼ終わったようだ。イラクではイラン寄りの、マリキ―政権が打倒され、シリアは北部ではアサド政権の影響力が、及ばなくなっており、実質上の分割がなされた。

 その次はトルコの内乱と、サウジアラビア、リビアなど産油国で、変化が起こるだろうと思っていた。と言うのはIS(ISIL)は既に、リビア、アルジェリア、サウジアラビア、エジプト、イエメンなどで戦闘を展開すると宣言していたからだ。

 エジプトではアンサール・ベイト・ル・マクデスと呼ばれるグループが、シナイ半島を中心に、反政府の戦闘を続けているし、アルジェリアではジュンド・ル・カリーファ組織が、IS(ISIL)の下部組織として、認められている。サウジアラビアでもIS(ISIL)関連のテロが、頻発するようになっている。

 いま急上昇し始めているのはリビアであり、同国東部のデルナ市のグループだ。リビアにはアンサール・シャリーア、という名のイスラム原理組織があり、戦闘を展開しているが、この組織はアルカーイダと、直結しているといわれている。

デルナの組織はイスラム青年諮問会議(マジュリス・シューラー・アッツ・シャバーブ)という名であり、アルカーイダとは関係がなく、IS(ISIL)と関係があるとみなされている。この組織は8月に、エジプト人を殺人罪で、公開処刑している。

 そもそも、デルナにはIS(ISIL)に参加する若者を、軍事訓練する組織が出来上がっており、そこで訓練を受けた者が、シリアやイラクに送られているということのようだ。しかし、現段階では、この組織はIS(ISIL)によって、正式な下部組織とは見なされていない。

 問題はこのようなリビアの状況に対して、アメリカが強い反応を示していることだ。アメリカ政府はアルジェリア政府に対して、リビアのIS(ISIL)攻撃に際して、領空通過を認めてくれるよう要請するとともに、緊急着陸も認めてくれるよう要請している。

 そればかりか、アメリカは潜水艦の寄港も要請しており、場合によっては、リビアに対して本格的な軍事介入をする、覚悟なのであろう。同様の要請は、アメリカ政府によって、エジプトにも出されている。

 どうやら、アメリカの本音はアメリカが支援している、ハフタル将軍の属する世俗派政権を、力で支えるつもりだ、ということであろう。こうして考えると、IS(ISIL)とは極めて便利な組織、ということになる。アメリカが軍事介入を望む国で、活動を展開してくれ、アメリカの軍事介入に、正当な口実を与えてくれるからだ。