『悪化が顕著なトルコ・アメリカ関係』

2014年10月23日

 

 先にも書いたが、トルコとアメリカの関係は、シリアのコバネ問題を巡って、ますます悪化しているようだ。そもそも、アメリカが目的としているシリア対応と、トルコが目的と吸するところには、だいぶ差異があるのだ。

 アメリカはシリアのコバネという街が、戦略的に重要だと捉えているが、それはトルコにとっては、もっと深刻な問題なはずだ。IS(ISIL)がシリアを離れる場合は、トルコを経由することになるが、彼らがトルコにとどまって問題を起こすことも、十分に考えられるからだ。

 また、シリアでの戦闘を終えて 、自国に帰っていく戦闘員たちは、トルコを経由することになる。その戦闘員たちがヨーロッパやアメリカで、問題を起こす危険性は極めて高いし、すでに幾つかの国でそれが起こっている。したがって、アメリカはいまになって、IS(ISIL)を何とか打倒したいと考えているのだ。

 しかし、トルコが考えていることは、これとは全く異なる。トルコのシリア問題への関与の意向は、あくまでもアサド体制の打倒であって、IS(ISIL)の打倒ではない。トルコは出来る限りIS(ISIL)との、良好な関係を維持し、クルド問題の解決に使いたいと考えているようだ。

  その意味でトルコは、アメリカによるクルド人に対する、武器と医薬品の提供に、強硬に反対してきた。しかし、アメリカ側は人道的な判断もあり、武器や医薬品を空から投下させる、という方法をとっている。

 トルコはこの問題で反シリア組織の、FSA(自由シリア軍)に提供すればいいだろうと食い下がったが、完全に無視された形となった。アメリカはあくまでも、当初の方針通りに進めるので、これまでトルコとの間で交わしてきた立場に、変化はないと言っている。

 今回の空中からの投下支援物資は、アメリカの説明によれば、イラクのクルド自治政府が提供したものだったということだ。あるいは一部はそうなのかもしれないが、それが事実かどうかはわからない。

 アメリカは支援物資の提供者は、イラクのクルド自治政府であり、アメリカはその支援物資を運んだだけだ、と言いたいのであろうか。もちろん、そのアメリカの言い逃れが、トルコを満足させるはずはなかろう。

 トルコの主張はアメリカに無視され、今回お空からの支援が送られたわけだが、その中には医薬品に加え、手榴弾、機関銃、対戦車砲などが含まれていた。トルコはいつの日にか、それが自分たちに向けられることを、懸念しているのだ。

 トルコに圧力をかけているのはアメリカだけではない、EUも同様に、トルコに難しい要求を突き付けている。それは食料品や医薬品といった人道支援物資の通過を、認めろというものだ。これもトルコにしてみれば、簡単な問題ではあるまい