『米が支援物資投下・トルコはペシュメルガ通過許可』

2014年10月21日

 

 シリア北部の街コバネでのクルド人居住者と、IS(ISIL)の戦いが続いて久しい。クルド人はIS(ISIL)との戦いで、一歩も引かない様子だ。しかし、武器弾薬を始め、食料、医薬品の不足が、目立っているものと思われる。

 そこで、アメリカがC-130輸送機3機を使って、支援物資の上空からの投下を行った。IS(ISIL)側が対空ミサイルを持っているのではないか、と言われていたが、今回の投下は援護機なしに行われ、問題はなかったということのようだ。

 このアメリカのコバネのクルド人に対する、空中からの投下による支援物資の提供について、トルコ政府は自国のインジルリク空軍基地などを、使用することを拒否している。今回のアメリカ軍の支援が、何処の基地を使用したのかについては、いまのところ分からない。あるいは、トルコ政府が密かに許可したが、国内外への影響を考慮して、拒否の姿勢を示したのかもしれない。

 このアメリカ側の動きを見て判断したのか、あるいはトルコが独自に判断したものかわからないが、トルコ政府はアメリカの空からの、支援物資投下のすぐ後に、イラクのクルド軍ペシュメルガが、トルコを通過してシリアのコバネに入ることを認めている。

 これまでのトルコ政府の立場は、あくまでもコバネのクルド人組織PYD(クルド民主連合党)が、PKK(クルド労働党)と連携しているので、一切の支援を認めないというものであり、トルコからのクルド人避難民や、それ以外のクルド人のコバネ支援戦闘員の、国境超えを許可していなかった。

 今回、イラクのクルド人部隊ペシュメルガが、シリアに入ることを認めるという、トルコ政府の決定は、画期的なものであることがわかろう。それはトルコ国内で起こった、コバネ支援デモで分るほど、トルコ国内にはクルド人が居住しており、放置すれば不測の事態に陥りかねない、という懸念が決断させたものなのかもしれない、

 問題は今後これらの判断が、どのような結末を生み出すかということだ。先にも書いたように、トルコ政府はトルコのPKK(クルド労働党)はテロ組織だとして、組織の議長オジャラン氏を投獄しているが、オジャラン議長はトルコ政府がコバネ対応で、クルド人を見殺しにするようであれば、トルコとの和平交渉は止めると言ったことだ。

 もう一つは、イラクのクルド自治政府は、石油収入があることから、トルコやシリアのクルド人を集めて、合同会議を開催し、シリアのクルド人には、武器と資金を与えていることだ。そのことは将来、イラクのクルド自治政府を中心に、トルコ、シリア、イラクのクルド人が、ゆるやかな連帯関係を構築し、それが将来のクルド国家設立に、繋がっていくかもしれないということだ。

 アメリカは医薬品や食糧に加え、クルド人に武器、弾薬も投下した。その武器が何時の日か、トルコに向けられるということを、エルドアン大統領は懸念しているのであろう。