『トルコ・アメリカ関係悪化か』

2014年10月22日

 

 トルコとアメリカの関係がIS(ISIL)問題を中心に、悪化しているようだ。トルコにとってIS(ISIL)は隠れた友人であり、対クルドのパートナーになっている。それはトルコが30年以上にも渡って、PKK(クルド労働党)との戦いを続けてきているからだ。

 しかし、アメリカにとっては現段階で言えば、IS(ISIL)は最も脅威的な敵とみなしている。当初は、アメリカとIS(ISIL)との秘密の協力関係が、噂されてきていたのだが、最近になると、IS(ISIL)の欧米諸国に及ぼすであろう脅威を、無視できなくなってきているからであろう、

 アメリカはIS(ISIL)をイラクとシリアで、打倒したいと考え始めている。そして、人道的見地からシリアのコバネにいるクルド人を、IS(ISIL)の攻撃から守ろうとしている。例えば、つい最近実行した、コバネのクルド人に対する、医薬品や武器弾薬の飛行機による投下は、その具体的な形であり、それに先立つIS(ISIL)の拠点に対する空爆もそうであろう。

 トルコにとってこのアメリカの動きは、極めて不愉快なものであろう。トルコ政府はコバネのクルド人たちを、自国でテロ活動を展開してきた、PKKと連携するテロ組織(PYD)であり、味方をするつもりは全くない。そればかりか、アメリカが唱える人道的立場からの、コバネのクルド人に対する、医薬品や武器弾薬の供給は、見逃せない大問題となっているのだ。

 しかし、アメリカ政府はコバネのクルド人たちを、テロ組織とは見なしていない。あくまでもIS(ISIL)の攻撃に対して、敢然と立ち向かう市民とみなしているのだ。したがって、トルコが主張する、シリアのクルド人(PYD)はテロだという認識とは、真っ向から対立しているのだ。

 こればかりではない。アメリカ政府の本音はアメリカ軍が、IS(ISIL)に対して空爆を加え、トルコは陸軍を派兵して欲しいのであろう。誰もが分っているように、敵を倒すためには、空爆だけでは不可能だからだ。

 しかし、アメリカは自国の軍人を犠牲にしたくないから、トルコの軍人を使いたいという腹の内を、トルコはよく分っている。ヨーロッパ諸国もアメリカと同様の考えであろう。そこでトルコが言い出したのは『他の国も派兵するのであれば参戦するが、単独では派兵しない。』というものだった。このトルコの立場はアメリカをして、激怒させていることであろう。

 トルコ政府がイラクのクルド兵ペシュメルガの、自国領を通過してのコバネへの参戦を認めたことは、トルコにしてみればギリギリの妥協であったろう。しかし、それはアメリカが満足できるレベルには、至っていないのではないか。

 先日国連で行われた国連安保理会議で、トルコが国連安保理の非常任理事国になれなかったのは、多分にアメリカのトルコに対する不満が、理由であったろうという考えが、トルコでは広がっているようだ。