エジプト軍機がリビアのベンガジにある、イスラミストの拠点を、空爆したという情報が流れた。その真偽のほどは明らかになっていない。エジプトの報道ですら肯定するものもあれば、否定するものもあるくらいだからだ。
しかし、エジプト軍機によるベンガジのイスラミスト拠点空爆は、ほぼ間違いがないのではないかと思われる。以前に、エジプトはアラブ首長国連邦がリビアを空爆する際に、便宜供与しているからだ。その時は、国籍を消した戦闘機を、外国人(国籍不明)パイロットが搭乗して、リビア空爆を敢行している。
今年の9月にエジプトのカイロを訪問した折、現地の軍関係者たちはエジプトがリビアの国内情勢に、強い関心を寄せていることを語るのを聞いた。それは、エジプトの隣国であるリビアに、多数のエジプト人ムスリム同胞団員が逃亡しており、彼らが支援してリビアのイスラミスト勢力の力を、強化しているからだ。
リビアでエジプト人ムスリム同胞団が、強い影響力を持つようになれば、やがてはエジプトの国内を、混乱させることにつながる、という懸念が湧くからだ。そこでエジプトの軍幹部の間では、リビアの状況の推移を観察し、必要な段階に至れば、自国防衛同様に軍事力を、行使するという意志が強かったのだ。
また、エジプトにしてみれば、リビアに欧米諸国が必要以上に関与してくることも、決して歓迎できないであろう。何とかそうした動きを、阻止するうえでも、そろそろ出番が来たということであろう。
今回のエジプト軍機による、ベンガジのイスラミスト拠点空爆と時を同じくして、世俗派のリーダーの一人である、リビア国民軍を指揮するハフタル将軍が、ベンガジの拠点奪還に動くことを宣言している。
それは述べるまでも無く、エジプトの支援が確約され、実行段階に入ったからであろう。ハフタル将軍はベンガジ攻防戦で、不利な状況に陥った時、ひそかにカイロに逃れていた。その段階でエジプト側と秘密交渉をし、今回の状況につなげたのではないか。
エジプト軍が本格的に乗り出したということは、リビアの内乱が運良ければ、収束の方向に向かう、始まりかもしれない。どこの国でも言えるのだが、通常のミリシア軍(私兵)に比べ、正規の軍隊の方が秩序で勝り、訓練も行き届いていることから強いだろう。
エジプトのシーシ大統領はアメリカに対し、シリア問題を巡っては、すべてのイスラム・テロを相手にすべきだと言っていた。シーシ大統領に言わせれば、エジプトがいま行うべきなのは、シリアへの陸軍派兵ではなく、自国の安全に直結する、リビアのイスラミスト掃討の方が、優先するということであおる。
そのエジプトの決断が、何処まで実行されていくのか、また、その成果はどうなるのかについては、現段階では判断が出来ない。