イランのロウハーニ大統領は10月7日に、テヘラン大学で学生を前に講演を行った。しかし、学生の間からは全く意見が出てこなかった。このことにロウハーニ大統領は気を落としたようだが、無理からぬことであろう。
ロウハーニ氏が大統領に立候補した段階では、彼はより自由な政治環境を約束していたのだが、就任後には何も変わっていないようだ。たとえば大統領選挙での対立候補者たちに、しかるべき重要なポジションを、与えるよう要望する声はあったが、結果は全く無視される形となっている。
それだけではない。デモに参加した学生が多数退学になっていたが、彼らの復学も実現しなかった。また女子学生の履修科目にも、制限がかかったままになっている、ということだ。これでは何がロウハーニ大統領の、自由の拡大なのかということになろう。
ロウハーニ大統領はハメネイ師の信頼が篤いことで、大統領に立候補ができ、しかも、当選後に大統領に就任できたのだといわれている。つまり、悪い表現をすれば、ロウハーニ大統領はハメネイ師のかけた、枠の中でしか動けない立場にあるということだ。
加えて、イランの政治では革命防衛隊が、大きな影響力をいまだに持っている、ということであろう。
それでは何故、ロウハーニ大統領はこの時期に、テヘラン大学を訪問し、学生を前に『学術的自由』を拡大すると語ったのであろうか。多分に中東地域で吹き荒れる、過激な動きと大衆の意識を、考慮してではないだろうか。今では古い話のように聞こえるが、『アラブの春革命』は伝染病のようなものだった。それは時間の差はあるものの、中東地域諸国全部に、多かれ少なかれ影響を与えていくだろう、と私はみていた。
チュニジア、エジプト、リビア、イエメンでアラブの春革命が起こり、もっと悪い形の変化がシリアで始まっている。加えて、湾岸諸国にも変化の兆しが、見え隠れするようになってきている。イランも例外ではないということであろうか。数日前にはテヘランで爆発事件が、起こったと伝えられたが,後にそれは核施設であったと反体制派が語っている。それが事実であるならば、極めて危険な動きということに、なるのではないか。
イランにとってはIS(ISIL)の動きも、警戒しなければなるまい。IS(ISIL)はシーア派やマイノリティに対する、攻撃を加えていることを考えると、将来的には、イランに対しても、行動を起こしてくるかもしれないのだ。
中東に対して関心を抱いている人たちの間では、中東に大混乱をもたらすことを、画策している国があるといわれている。イランがその対象国のなかで、例外だという保証はあるまい。混乱を起こす人たちが狙っているのは、中東地域のエネルギーの支配なのだから。そして、イランも地域のエネルギー大国であることを、忘れてはなるまい。