トルコはいま、極めて複雑で危険な立場に、立たされていると思われる。これまでに何度かその状況を報告してきたが、トルコ人の友人は私が懸念する以上に、トルコが現在置かれている立場に、不安を抱いている。
彼が今朝送ってきたメールによれば『私は今眠れないほど心配している。私の国はどうなっていくのだろうか。いまトルコが置かれている状況は、極めて厳しい。国をリードする立場にある者たちは、私欲しかないのだろうか、、、。』
この友人は極めて明るい性格で、何時もは周囲の人たちを励ましているのだが、今回の事態を前に、相当落ち込んでいるようだ。それも無理からぬことであろう。私も彼と同じように、トルコの今後に大きな不安感を抱いている。
トルコ政府はこれまで、イラク北部の町モースルのトルコ領事館が、IS(ISIL)によって襲撃され、領事館を含む49人のスタッフが人質になっていることを理由に、IS(ISIL)に対する軍事攻撃には、参加できないと言い続けてきた。
しかし、つい最近になりこのトルコ人人質釈放が実現し、トルコはIS(ISIL)攻撃を拒否する理由が無くなってしまった。そうなるとイラクやシリアに、最も近いNATOの加盟国であるトルコは、アメリカとNATOが始めたIS(ISIL)攻撃に、参加しないわけにはいかなくなったのだ。
加えて、トルコのエルドアン大統領は国連の場で『IS(ISIL)攻撃は空爆だけでは目的を達成できない。』と主張したのだ。その結果、トルコはエルドアン大統領の発言に責任が生じ、トルコ軍をIS(ISIL)攻撃作戦に、参加させなくてはならなくなったのだ。
すでにトルコ国内にあるインジルリク空軍基地の使用を、アメリカやNATOに対して認めたが、トルコ議会に諮りトルコ陸軍を、シリアとイラクの戦線に送ることになろう。もちろん野党各党は、今回の戦争参加に対し強く反発している。
だが、アメリカの圧力の前に、そしてNATOのメンバー国として、トルコがIS(ISIL)攻撃作戦への、参戦を拒否し続けることは、ほとんど不可能であろう。もしトルコが参戦を拒否することになれば、アメリカもNATO諸国も、トルコにしかるべき罰を、与えることになる懸念がある。
もし、トルコが参戦を拒否すれば、アメリカとNATO加盟諸国は、トルコに対する経済制裁をするであろうし、金融制裁もしてくるものと思われる。そうなれば欧米とトルコの貿易量が大幅に減り、トルコ・リラは暴落し、外国からのトルコに対する短期投資資金は、ごっそりと国外に出てしまおう。そうれはトルコ経済が破滅するということだ。
しかし、トルコが参戦しても危険は伴う。IS(ISIL)がトルコ国内でテロ活動を活発化させ、トルコ青年にIS)ISIL)側への参戦を呼びかける、危険があるからだ。トルコ国内には既に、IS(ISIL)の軍事訓練基地があり、連絡事務所が多数あり、イランの報道ではアンカラに領事館も開設されたということだ。これらすべては、現政権が生み出した危険なのだ。現政権にはこの問題を解決する、能力があるのだろうか。