2014年10月10日

NO3301   1011            中東TODAY

            

 IS(ISIL)はそんなに強いのか』

 一時機猛烈な勢いで進軍していたIS(ISIL)が、このところ勢いを減じているのではないか、と思えてならない。確かにコバネについて言えば、IS(ISIL)が優位に立っているように報じられているが、必ずしもそうではないのではないか。

 一方のクルド住民は、十分な武器弾薬が供給されているという話は、どこからも伝わってこない。それにもかかわらず、IS(ISIL)はコバネをいまだに落としかねている。西側のマスコミは、既にコバネの3分の1IS(ISIL)によって支配されている、と伝えているがそれがどうしたと 言うのだろうか。

 冷静に状況を見ていると、どうやらコバネでの戦いで、IS(ISIL)は苦戦している、ということではないか。それについて指摘すれば、アメリカは空爆による効果だ、と言いたいのであろう。目いっぱいクルド住民側の苦戦を伝え、危機をあおり、あたかも明日にでもコバネがIS(ISIL)の手に落ちるように宣伝しておいて、そうならなかったのはアメリカの貢献が大だったからだ、と言いたいのであろうか。

 イラクでもイラク軍が、IS(ISIL)の支配地域を奪還した、というニュースが伝わってきており、イラクの高官はトルコ軍が介入することを拒んでいる。もし、イラク政府側が苦戦しているのであれば、何らかの支援を、トルコに依頼するのが普通であろう。アメリカやヨーロッパに対しても、イラクは支援要請をしていないのだ。

 クルドのペシュメルガ軍も、IS(ISIL)との戦いで、優位に立っているようだ。明日にでもクルド自治区の首都エルビルが、IS(ISIL)の手に落ちるように言われていたのだが、実際にはそうならなかったし、今までIS(ISIL)が支配していたモースル市も、どうやらほぼペシュメルガの支配する状態に、回復したようだ。

 それでは実態はどうなのかということになるが、実はコバネを巡る攻防を見て分かるように、最近になってIS(ISIL)が戦闘を展開している地域は、シリアとイラクの北部地帯であり、トルコに隣接するところではないのか。それは近い将来、IS(ISIL)が敗北する段階で、トルコへの逃げ道を、確保しようとしているのかもしれない。

 最近になって、IS(ISIL)は宣伝がうまいという指摘が、各国からなされている。世界から戦闘員を集めることができているのも、イスラム原理主義を支援する人士から、寄付を集めるのも、IS(ISIL)の宣伝のうまさによるというのだ。

 それは同様に、戦果についても同じことが言えるではないか。戦いの当初では、残忍な虐殺や処刑がネット上に流され、敵側の恐怖を募らせた。次いで戦闘における勝利が、何倍にも膨らませて伝えられていたのではないのか。

 そのようなIS(ISIL)側の宣伝が効奏しているのは、アメリカの都合に合致しているからであろう。アメリカはIS(ISIL)をモンスターのように表現することによって、世界からこの戦争への参加国を募り、資金援助を頼み込んでいるのではないのか。