カタールのエミール(首長)が、サウジアラビアのジェッダを訪問し、サウジアラビアのアブドッラー国王と対談した。
両者の間で語られた内容について、詳しい報道はないが、およそ次のような、ポイントであったとされている。一つはカタールのイスラム原理主義者に対する支援について、サウジアラビア側がクレームを付けたという点であり、この問題はムスリム同胞団員が、カタールに居住していることが、問題になってきている。
述べるまでもなく、サウジアラビアやクウエイト、アラブ首長国連邦などは、ムスリム同胞団を危険なテロ組織と見なしているが、カタールは支援を続けてきていた。最近になり、湾岸3か国からの圧力が増し、外交関係が悪化し、サウジアラビア、クウエイト、アラブ首長国連邦はカタールから、大使を召還させもした。
カタールの主張はこの点について、すでに何人かのムスリム同胞団幹部は、自国から追放したと伝え、3国の言い分を受け入れていると説明した。しかし、サウジアラビアはそれだけでは、満足していないようだ。
シリアの反政府側の過激なイスラム勢力、たとえばヌスラに対する、カタールの支援についても、クレームを付けているようだ。カタールは何が目的なのか不明だが、シリアではヌスラ組織や、IS(ISIL)などといった、過激なイスラム組織に対し、巨額の援助をしている。
このことについては、サウジアラビアもいわば同罪だったのだが、サウジアラビアは自国の治安問題や国際的な非難もあり、最近になって、大幅にイスラム原理主義組織への支援を、控えているようだ。
問題は、現在カタールとサウジアラビア、クウエイト、アラブ首長国との関係が悪化していることが、今後のGCC(アラブ湾岸諸国会議)の結束に、ひびを入れるのではないか、ということだ。
現在湾岸諸国間ではイランに対抗すべく、湾岸統合海軍の設立を話し合っているようだ。もちろん、それがイランを敵視して結成される、とは言っていないが、実質はそうであろう。その湾岸統合海軍結成に、カタールは参加できるのかが、疑問視される。
もし、この湾岸統合海軍にカタールが参加できないとなれば、同国と他の湾岸諸国との関係は、相当悪化していくことになろう。そうなれば、これまでのケースから推測すると、カタールは他の湾岸諸国の内政に、関与し始めるのではないか。少なくとも、アルジャズイーラ・テレビを使った、ネガティブ・キャンペーンを、展開する可能性はあろう。
このような湾岸諸国間の対立状況を、オマーンは冷めた目で見ているし、その影響を受けないよう、以前からイランとの単独の関係維持を、図ってきている。そのことは、もし今回の湾岸統合海軍結成で、カタールが外されるようなことになれば、湾岸諸国は少なくとも、3つに分裂するのではないか。
そうなれば弱小国は、外部の圧力に抵抗できなくなろう。