『エルドアン大統領の決断やいかに』

2014年9月30日

 

  先月の828日に、めでたく大統領に就任したエルドアン氏だが、とんでもない難問に直面することになった。述べるまでも無くその難問とは、IS(ISIL)掃討作戦に参加するか否か、という大決断だ。

  これまでトルコ政府は、イラク北部の都市、モースルにある領事館がISによって占領され、49人が人質になっていることを口実に、IS掃討作戦への参加はもちろんのこと、便宜供与も拒否してきていた。

  アメリカ軍が使用している、トルコのインジルリク空軍基地からの、ISに対する攻撃を許可していなかったのだ。それはNATOのメンバー国としては、苦しい判断であったろうと思われる。

  しかし、今回の国連総会の場で、エルドアン大統領は『IS掃討には空爆だけでは無理であり陸上戦闘員をシリアやイラクに送るべきだ。』と主張した。結果的にはトルコ議会で討議されることにはなっているが、エルドアン大統領の発言通りにトルコ陸軍は、シリア・イラクに軍事侵攻することになろう。なかでもシリアへの侵攻は、極めて近かろう。

  そのことが今後、トルコの経済に大きな負担を及ぼすことは、述べるまでもなかろう。戦費とは実に無駄の多いものだからだ。その無駄を承知の戦争を、エルドアン大統領は決断したのだ。

  エルドアン大統領の地位は揺るがないだろう、と見られているなかで、今回の戦争参加の決断が、どう響くかということだ。エルドアン大統領に対する支持が強いのは、あくまでも国民が経済的に、豊かになっているからであり、これが逆に低下することになれば、状況は一変しよう。

  エルドアン大統領は当初、ISやヌスラといった過激イスラム主義者を支援することにより、自国内に抱えるPKK(クルド労働党)問題を解決したい、と思っていたようだが、ここに至っては、もうそんな芸当は無理になってしまったろう。つい最近、エルドアン大統領はISについて『イスラムとは関係のない組織だ』と非難の意見を述べている。

  これまではヌスラやISに対して、義勇軍の通過地点としての場所を与え、武器弾薬を補給し、資金の流れも支援してきていたのだが、完全に反対の側に回った、ということであろう。そのことは、今まであったろうサウジアラビアやカタールからの恩恵も、止まるということではないのか。

  エルドアン大統領がこの難局を、どう突破できるかが、彼の将来に直接的に、影響してこよう。戦争参加はトルコ内部のインフレに、拍車をかけるかもしれないし、経済にダメージを与えるかもしれないのだ。

  この苦しい状況のなかで、再度PKKのテロが活発化してきているようだが、それはエルドアン体制に対する揺さぶりであろう。加えてISに対するトルコの立場が敵対的になれば、トルコ国内でのISによるテロも増えていくのではないのか。ドイツはすでにトルコへの観光目的での渡航について、自粛するよう呼びかけている。つまりトルコは危険だということだ。