中東の大国である二つの国の大統領が、新しく選出された。エジプトとトルコがその国だが、エジプトではシーシ元国防大臣が新大統領に就任し、トルコでは首相職にあったエルドアン氏が、新大統領に就任した。
両国は新大統領が誕生した後も、国内的に多くの問題を抱えている。インフレが進み、政府発表では10パーセント程度というのだが、実質は20パーセントを超えているものと思われる。エジプトの場合は、ガソリンに対する政府の補助が、大幅に削減されたために、ガソリン価格は上がっている。それにつられて他の物品の価格も上がっている。
トルコでもインフレは進み、庶民のおやつとして親しまれている、シミット(ゴマをまぶしたドーナツ型の焼き菓子)の価格が、今年の1月に1リラ(約60円)だったものが、1・4リラに上がっているということだった。
当然こうしたなかでは、国民の政府に対する反発が強まりそうなものだが、意外に社会的には落ち着きを見せていた。それはエジプトもトルコも、そうした理由があるからだ。
エジプトではシーシ大統領が国民に我慢を訴え、何とかこの危機からエジプトを救おう、と呼びかけている。彼の静かな語り口が、エジプト国民の心をとらえ、支持を強めているようだ。
もちろんそれだけではない。シーシ大統領は第二スエズ運河の建設を決定し、運河からの収入を大幅に増やす考えだ。その第二スエズ運河建設資金は、エジプト国民にだけスエズ建設債権が売り出されることとなったが、目標額は8日で完売になったといわれている。その利回りは年率で12パーセントであることから、国民はシーシ支持に合わせ、恰好な投資対象と考えたのであろう。
この第二スエズ運河計画には、沿岸の開発も含まれている。ストックヤード、コンテナ船舶の建造エリア、工場、養魚場、ホテルを含む観光施設など盛りだくさんで、400万人のエジプト人が新たな、仕事の機会を得るということだ。
いまのところ、ムスリム同胞団による散発的なテロは起こっているものの、ほぼ収まったとみていいのではないか。シーシ大統領の手腕が問われ、彼に対する国民の支持が、問われるということだ。現段階で判断すると、アラブの春革命を終えたエジプトが、国家再建に本腰を入れた、ということであろう。
他方、トルコの場合は相変わらず、エルドアン大統領の独裁的な政治運営が、行われている。新首相に指名されたダウトール氏は、エルドアン大統領のイエスマンであり、まったく彼の独自性を発揮していない。
そればかりか、エルドアン大統領は政敵側の企業に対する、弾圧を強めているが、そのなかにはバンク・アシアも含まれている。この銀行は欧米で評価が高いことを考えてみると、馬鹿げた対応と思えてならない。加えて、エルドアン大統領はIS打倒戦争で、陸軍の派兵を決定したようだが、それがどれだけ高くつくか今から恐ろしい。