『リビアは実質分割状態』

2014年9月20日

 

 カダフィ大佐という独裁者が打倒されると、国家はこれほど混乱するものか、とつくづく感じさせられるのが、リビアの現状であろう。それはシリアやイラクとは異なり、いまのところ直接的には、外国人や外国が関与していないにも関わらずだ。

 もちろん、現時点でも裏側では、かつての統治国であるイタリア、独立後に関与していたイギリスとアメリカ、そして利益を得ようとするフランスが、画策していることは確かだ。

 それら外国の関与が、現段階では控えめであるにも関わらず、リビアは混乱のきわみにある。ミスラタという地中海岸の、トリポリから東に行ったところにある街が、一つの集団であり、彼らはイスラム色が強い。多分に背後にはムスリム同胞団がいるのであろう。この街にはカダフィ大佐が殺害された後、しばらく彼の遺体が、陳列されていたところでもある。

 他方、カダフィ大佐打倒のために、アメリカから帰国したハフタル将軍を中心とする、世俗派のグループがある。彼らと気脈を通じているであろう集団が、現在サイフルイスラームを閉じ込めている、ジンタンの集団でありこれがミスラタ・グループと、トリポリ空港の支配権をめぐって戦ったが、ミスラタ・グループが勝利している。

 こうした内戦状態に、危機感を感じたリビア政府は、現在リビアの東部にあるトブルクに、本拠を移している。そこでは議会も開催されるのだが、何事にも合意が得られず、混乱が続いたままだ。

 それ以外にも、幾つものグループが存在するが、それらは大半が地域の部族集団であり、石油収入を手にすべく、対立しているのだ。このためリビアの油田は次々と支配者を替えており、積出港も支配権が頻繁に替わっている。

 これでは国家は成り立たない。そこで周辺のアラブ、例えばエジプトやアルジェリアが関与しそうなのだが、現段階ではそれも起こっていない。それは多分に大国の介入を、警戒しているからではないか。

 しかし、エジプトにしても、アルジェリアにしても、あるいはチュニジアにしても、イスラム原理主義者たちは、国境に関係なく活動しているので、何とかしたいと考えていよう。

 状況がもっと混沌としてきたときに、大国はリビア分割に乗り出すのであろう。それまでの間は、リビア人が意味も無く戦い、殺されていくということだ。私は常に必要悪としての独裁者の役割を認めてきていた。

サダム亡き後のイラク、カダフィ亡き後のリビアはその典型例であろう。彼らが死んだ後は混乱だけが繰り返されている。それは、アラブ世界ではいまだに部族の結束と、地域住民への影響力が絶大なためだ。政府は余程強権の独裁者が登場しない限り、機能し難いのだ。