『時間はテロリストを英雄に味方を敵にする』

2014年9月12日

 

 時間の経過とは、魔法使いのようなものだ、と中東を見ていると、つくづく思うことがある。いままでテロリストと呼ばれていた人物が、英雄になったり、国家を代表する人物になったりするし、その逆もある。

 しかも、それが一人の人物に対しての評価でも、時間の経過によってころころ、変わってしまうのだ。例えばビンラーデンは、アフガニスタンにソ連軍が駐留している頃は、まさに西側から見た英雄であり、彼の活躍をアメリカもサウジアラビアも賞賛していた。

 しかし、しばらく経つとビンラーデンは、極悪非道のテロリストの頭目として評価され、まさに世界的なお尋ね者に成り下がっている。似たような人物は何人も中東世界にはいるのだ。

 リビアのカダフィ大佐もそうであろうし、イラクのサッダーム・フセイン大統領もそうであろう。イエメンのアリー・サーレハ大統領もエジプトのムバーラク大統領もその一人であろう。一時期彼らはみな高い評価を、西側諸国から受けていたのだ。彼らは最終的には、犯罪者、独裁者といったレッテルを、西側諸国と国民から張られ、不運な最後を迎えている。

 いま、かつてはアルカーイダのメンバーとして逮捕され、イギリスの刑務所に投獄されていた人物が、リビアを代表する立場でアルジェリアを訪問し、アルジェリア政府は正式な客として受け入れている。

 彼の名はベルハッジで、リビアで起こった反カダフィ革命の、初期の段階に活躍した人物だ。そのベルハッジの活躍を欧米は賞賛してすらいた。一体、欧米の中東の人物に対する評価は、どうなっているのかと首をかしげたものだ。

 現段階ではISILに対する評価が、そうなのではないか。シリアの反アサド大統領の動きは歓迎され、イラクのマリキー政権つぶしの段階では、残虐な手法を取っていたにもかかわらず、一定の評価がなされていた。

 しかし、いまとなっては完全に、西側の敵に回ったようだ。いままでスポンサーになっていたという、サウジアラビアのISILに対する評価は、極めて厳しいものになっているし、支援を送っていたといわれる、イスラエルもいまでは『ISILはイスラエルを襲うだろう』と言い出している。

 こうして考えてみると、いまの極悪人は明日になれば、正義の味方になっているかもしれないし、その逆もあるということだ。まさにアラビアン・ナイトのような世界ではないか。ただそのなかでは多くの大衆が犠牲になっているということだけは、忘れてはなるまい。