最近になって、アルカーイダが中東ではない、西アジアのインドに進出すると宣言した。その発表はアルカーイダのリーダーである、アイマン・ザワーヒリによって行われているだけに、重みと信憑性があろう。
しかし、どうしても腑に落ちないのは、何故アルカーイダがいまの時期に、インドに進出しようというのであろうかということだ。アイマン・ザワーヒリの説明によれば、インドとパキスタンとの間には、カシミール問題が存在するということのようだ。
カシミール州の住民のほとんどは、ムスリムであり、イスラム側のパキスタンが支配して当然であり、インドが口を挟む余地はない、ということであろう。それに加え、ムスリムが多数を占める幾つかの州についても、アルカーイダは進出すると語っている。例えばアッサム、グジャラート、アハメダバードなどといったちいきだ。
これまでインドでは、特別大きなヒンズー教徒とイスラム教徒の、衝突はあまり起こっていない。うまく棲み分けが出来ている、ということかもしれない。それにもかかわらず、アルカーイダがインドに進出するのには、それなりのわけがあるのではないか。
実はイラクやシリアでISIL(IS)が大奮戦し、世界的に知られるようになり、アルカーイダの影が薄くなってきている。ISILはシリア北部の油田を抑え、独自の財源も確保したと言われている。
こうなると、アルカーイダは世界のイスラム原理主義組織に対し、資金的援助でISに負けてしまうことになる。既にいくつもの組織がISの傘下に入ると宣言しているのだ。アルカーイダはイスラム原理主義運動の、リーダーとしての地位の再強化に、インドへの進出を言い出したのではないか。
アルカーイダはインドへの進出を、2年前から周到に計画しており、準備が整ったからいま行動に移す、と説明している。しかし、いずれが真実かは分からないが、他からの情報では、ほとんどアルカーイダの下部組織らしいものは、インド国内に出来ていないということだ。
アルカーイダはインドばかりではなく、バングラデッシュやミヤンマーにも進出すると言っている。つまり、アルカーイダの行動範囲は、インドとその周辺諸国が、対象になっているということだ。
さて、何故インドかということをいろいろ考えてみたが、それらしい結論には至っていない。ただ想像が許されるならば、ミャンマーに進出して、ISがシリア北部の油田を確保したように、ミャンマーの石油を確保する気なのかもしれない。しかし、ミャンマー軍はそれほど容易ではあるまい。ミャンマー軍は旧日本軍の指導を受けているのだから。
もう一つ考えられることは、中国への攻撃ではないか。いま中国ではウイグル族が、弾圧され殺されている。そのウイグルの若者が、シリアやイラクの戦線で、イスラム原理主義側に回って、戦っているのだ。つまり、ウイグル問題とアルカーイダを始めとする、世界規模のイスラム原理主義組織が、連結したのだ。
想像を豊かにして考えると、アルカーイダがやりそうなことは、中央アジアから中国に繋がる、ガス・パイプ・ラインを破壊する、と中国政府を恫喝することではないか。武力で真っ向から対立しても、アルカーイダには勝ち目が無かろうが、中国の経済の血液ともいえる、エネルギー部門に破壊工作をかけることはできよう。
もしそれが成功すれば、再度アルカーイダはイスラム原理主義組織の、本家としての立場を、強化することができようし、欧米諸国も内心では、中国に対する脅威という側面から、歓迎するのではないか。
『アルカーイダは何故インド進出を宣言したのか』
2014年9月 9日