エジプトがシナイ半島の一部を、パレスチナ側に提供し、グレータ―・ガザをパレスチナ国家にするという案が、いまイスラエルとアラブの間で、話題になっている。
この話は、主にイスラエルから出ているのだが、以前、エジプトでも話題になったことがある。それはムスリム同胞団政権のモルシー大統領時代、同大統領がガザのハマースに対して、シナイ半島北部をハマースに提供するという、密約が出来ていたというものだった。
今回はイスラエル側からこの話が出てきたが、当然のこととして、エジプト政府とパレスチナ自治政府は、即座にこの話を否定している。もし、そんなことになればガザは国家となり、ヨルダン川西岸地区はイスラエルの支配下の、自治区のようなものに固定されてしまうのだからだ。シーシ大統領だけではなく、マハムード・アッバース議長にも、受け入れるわけにはいくまい。
この話は実にうまくできていると言えそうだ、エジプト政府がシナイ半島北部のガザに隣接する、1600平方キロメートルの土地を、ガザのハマースに与えることであり、それはガザの現在の面積の5倍にあたるということだ。そして、ガザ地区とシナイ半島北部からなる地域は、グレータ―・ガザ国家になるというものだ。
この見返りにマハムード・アッバース議長は、1967年の国境線に基づく、パレスチナ国家の樹立を放棄するというのだ。当然そんなことを、マハムード・アッバース議長が受け入れられるわけはないし、もし、この提案を受け入れようものなら、彼がパレスチナ人によって暗殺される危険性は、非常に高くなるであろう。
そもそも、このシナイ半島北部を、エジプトがパレスチナに提供するという案は、イスラエルの国家安全局アドバイザーであった、ジオラ・エイランド氏が考えた案だということのようだ。
イスラエルにとってはシナイ半島北部を、ガザに提供するという案は、大歓迎なようでイスラエルの要人は、押し並べてこの案を称賛している。『 エジプトは実に寛大だ。』とヤアコウブ・ペリ元シンベト・トップは語っている。同氏はイスラエルの宇宙技術大臣でもあった人物だ。
彼に言わせれば『エジプトはシナイ北部のテロリストの活動に、頭を痛めているから、もってこいのアイデアだ。』ということのようだ。しかし、エジプト国民も政府も、シナイ半島の一部でも、そう簡単には手放すわけにはいくまい。それは、イスラエルの占領下からのシナイの奪還は、第4次中東戦争で果たし得た血の代償だ。これは根も葉もない、イスラエルの宣伝戦の一部であろう。