サウジアラビアが真剣に、外敵の同国への侵攻を恐れていることは、以前から分かっていた。そのために、サウジアラビア政府はアメリカに安全保障を依頼し、莫大な対価を支払ってきたものと思われる。
それは、アルカーイダに対するものであり、最近ではIS(イスラム国家組織)に対するものに、変わっているようだ。サウジアラビアは近隣諸国との間にも緊張関係が続いていた。例えばシーア派のイランとの関係は最悪の状態にあり、イランが核兵器を開発することへの不安は、頂点に達していた。
同様にイラクとの関係でも、シーア派政権マリキー首相に対する、不信感を強めていた。このため、サウジアラビアはイラクにジハーデストを送り込み、破壊工作をしていた、とイラク側から非難されてきている。
同じ湾岸諸国のカタールとの関係も芳しくない。サウジアラビアはムスリム同胞団の活動を、危険だと判断しているが、そのムシスリム同胞団をカタールが、支援しているからだ。
最近になると、イランやイラクそしてカタールといった国家よりも、サウジアラビアにとってはIS(イスラム国家組織)の方が、脅威になっているようだ。サウジアラビアはイラクにいるISが、自国に侵入し破壊工作を始めるのではないか、という懸念を強め、新たな対応策を講じ始めている。
それはかつて中国が匈奴の侵入に備えて構築した、万里の長城にも似た、900キロにも及ぶ、北部国境地帯のフェンス構築だ。サウジアラビア政府はこのフェンス構築をテロリストの侵入阻止、密輸業者、麻薬密売者の侵入阻止などを、目的とすると発表している。
これはフェンスだけではない。ナイト・ビジョン・スコープ、50基のレーダー施設、そして監視塔が設置される予定だ。まさに最新の金のかかる設備であり、大産油国にふさわしいものであろう。
2009年にも同様の計画が立てられ、ヨーロッパのEADSとの間に、イラクの国境を中心とする、9000キロにも及ぶフェンス建設が、合意されていた。その合意がどうなったのかは分からないが、代金だけは相当部分が、既にEADS社に渡ったものと推測される。
サウジアラビは金に糸目をつけずに、こうした防衛策を進めるのであろうが、それは根本的な解決策とは程遠いものであろう。サウジアラビアの体制が不安定化するか否かは、国民の政府に対する評価によろう。その意味では民主化の推進、シーア派国民に対する差別の、撤回が必要であろう。