あるトルコの専門家であろう人物が、現在のトルコを1908年代の青年トルコ党の時代のオスマン帝国のことを引き合いに出し、ダウトール首相が率いるトルコの将来について、悲観的な予測をしていた。
いまのトルコは、ある意味ではオスマン帝国復活に、向かっているのかもしれない。ダウトール首相は外相時代に、その本音を口にし、アラブ世界から批判されているが、その批判にもかかわらず、彼の本心は変わっていまい。
ダウトール首相が外相次代に掲げた外交スローガンは、善隣友好関係の構築だった。確かに初期においてはうまくいっていた。イラク、イラン、シリア、エジプトとの関係は絶妙であった。
しかし、その善隣友好関係はシリアとの関係から始まり、現在では総崩れになっているのではないか。一説によると、トルコがシリアの反体制派を支援し、ヌスラやISILを支援したのは、ダウトール外相の助言をアサド大統領が受け入れず、市民に攻撃を加えたからだと言われている。(その支援したISILは現在トルコ外交官を人質に捕り、明確にトルコの敵に回っているのだ。)
このため面子を失ったダウトール外相とエルドアン首相は、アサド潰しに本腰を入れたというのだ。そういうと日本人はあまり信じないだろうが、中東地域の人たちは、面子を非情に気にするのだから、十分ありうる話であろう。
エジプトとの関係は、エルドアン首相が支援していた、エジプトのムスリム同胞団政権を軍部が打倒したことで、完全に壊れてしまった。そして、エルドアン首相のムスリム同胞団への、異常なまでの肩入れは、ムスリム同胞団を敵とみなしている、サウジアラビア、クウエイト、アラブ首長国連邦をも、敵に回す結果となっている。
イラクの場合には、クルド地区の石油欲しさと、ビジネス・チャンスを一手に引き受けようと、クルド自治政府支援に本腰を入れたために、イラク中央政府との関係はずたずたになってしまった。
イランとトルコとの関係は、未だに一見良好に見えるが、イランはトルコやアラブを見下しているし、イランが送った賄賂とハニー・トラップに多くのトルコ閣僚が引っかかったことで、ますます見下していることであろう。イランとトルコの関係は、イランと欧米との関係が改善していけば、風前の灯ということではないのか。
この先、ダウトール首相がエルドアン大統領の、強引な政策に迎合し、オスマン帝国復活の夢を追えば、欧米からも完全に見放されることになろう。ダウトール首相にはエルドアン大統領に対し、ノーと言える度胸があるのだろうか。