パレスチナ自治政府のマハムード・アッバース議長は現在79歳で、間もなく80歳に達しようとしているが、そうしたなかで彼の後任ニ誰がなるのか、ということが話題になり始めている。これまでも何人かの人物の名前が、登場しては立ち消えになっていた。それはマハムード・アッバース体制が、盤石だったからであろう。
マハムード・アッバース議長の健康状態については、今のところ全く問題が無いようで、病気の噂は流れてこないし、彼は精力的に世界を飛び回ってもいる。近く予定されているアメリカ訪問の前には、フランスを訪問予定だ、ということのようだ。
マハムード・アッバース議長の政治家としての力量については、彼の健康状態とは裏腹に、あまり芳しい評価はなされていない。彼に対する支持率は10パーセント台にまで下がっている。ワシントンのパレスチナ問題専門家は『彼は他のアラブのリーダーと同じで、トップの座にいる快感を抱いてはいるが、何をなすべきかを知らないし、次に何が起こるかも予測できない。』つまり無能だ、という判断を下している。
アラブ人は一般に、長期的な戦略を立てて、行動するということは無く、その場その場で、問題を解決していくタイプだ。それは、リーダーについても同様であろう。部下の無能ぶりは、アラブの何処の組織でも言われることだが、結果として、管理職の仕事量は膨大になる。その悪循環は指揮する側の人間が、部下を信用できないため、部下は信用されていないので、何の権限も無いことにあろう。
マハムード・アッバース議長がいまだに、後継者を指名していないのも そのアラブ社会の構造と心理によろう。しかし、さすがにここに至って、有力な後継者の名前が出始めている。それはマハムード・アッバース議長が、今後は議長選挙に立候補しない、と発言したことも影響しているようだ。
いま話題に上っている後継者候補は5人いる。
:サラーム・ファッヤード(62歳)=元首相、元IMF スタッフ。
:マージド・ファラジュ(50代前半)=パレスチナ情報トップでアメリカ側の信頼が厚い。イスラエルとの関係もよく、ヘブライ語が堪能だが英語はそれほどでもない。
:マルワーン・バルグーテイ=現在イスラエル刑務所収監中、パレスチナ人の支持は強いが出獄できない。実質的に後継者にはなれない状態にある。
:ムハンマド・ダハラーン(52歳)=元ガザ治安責任者、米英の信頼厚い、イスラエルに近過ぎるとパレスチナ人が疑問に。しかし、カリスマ性、資金力、武力で人気もある。
:ムハンマド・シュタイェ(56歳)=サセックス大学Phd、経済専門、イスラエルとの交渉に参加した経験を持つ。
マハムード・アッバース議長の任期は、すでに過ぎているが、次の議長が選出されるまでは、現職に留まっていいことになっている。しかし、それにも限界はあろう。