『ISILは意外に弱いとペシュメルガが語る』

2014年9月10日

 

  イラク北部クルド自治区の軍隊、ペシュメルガの将校が語ったところによれば、イラクとシリアで破竹の勢いで侵攻して、恐れられたISILは、意外に弱かったということだ。

  ペシュメルガの将校に言わせると、ISILの陣地を落としたところ、そこには膨大な量の武器が、取り残されていたということだ。それにもかかわらず、彼等がその陣地から逃げ出したということは、敵対する側が真剣勝負をかければ、ISILは逃げ出すという特徴を、表しているということになるというのだ。

  ペシュメルガの将校に言わせると、そのISILの弱さは、ISILが軍隊として機能していないからだ、ということだ。軍隊として組織だって戦闘するものに対して、軍隊として応戦する能力がISILには無いということだ。

  言ってみれば、ISILは個人プレーの戦闘集団であって、チーム・プレーの戦闘集団ではない、ということであろう。そのことは、軍としての秩序が無いために、一定の攻勢をかけられた場合、対抗する作戦もあり得ない、ということであろう。

  確かに、イラクではイラク軍とペシュメルガ軍の攻勢の前に、ISILは次々と占領していた都市を、手放して逃げ出している。その典型が要衝モースル市の大半を、放棄したことであろう。それ以外にも、アメルリ市、スレイマン・ベク市についても、同じことが言える。

  ISILの意外な弱点は、彼らが外国人の寄せ集めであることにあろう。共通の言語が存在しない点、十分な軍事訓練を受けていない点、それぞれの参加目的が異なる点などによろう。

  アフガニスタンやパキスタンから駆け付けて参加した者たちは、まさにジハードが目的であろうし、他のアッラブ地域からの参加者は出稼ぎの金目当てとジハード目的、欧米からの参加者は殺害が目的であり、金もうけや冒険の体験が、目的であろう。

  これまでISILが破竹の勢いで侵攻できたのは、ツイッターやメール、インターネットなどを駆使した、宣伝戦の勝利であり、そのルートでの義勇兵の募集であり、残虐行為を広めることによる、心理作戦の成功であったろう。

  もちろん、これを支えたのはサウジアラビアやカタールといった、湾岸からの援助資金、トルコやアメリカからの武器などであろう。

  ここにきて、ISILが守勢に回り始めたのは、サウジアラビアやカタールなど湾岸諸国からの、資金提供が細ってきていることや、欧米諸国が厳しい対応を取り始めたこと、欧米の圧力でトルコが支援の手を、控え始めたことなどによろう。