『ダウトール新首相誕生・トルコにとって吉か凶か』

2014年8月23日

 

 本来であれば、全ての重要なニュースはエルドアン首相が、発表することになっていたものを、ギュル大統領が発表したために、トルコの重要発表スケジュールに狂いが生じた。

 エルドアン首相は828日の大統領就任後に、彼の後継者である新首相の名前を、公表する予定であった。しかし、それに先駆けてギュル大統領は、このしきたりを破り、『新首相に就任するのはダウトール外相だ。』と発言した。

 結果的に、番狂わせにあったエルドアン首相は、急遽彼の後任首相の名を公表することとなった。もちろん、その新首相はダウトール外相であり、人事に変更は無かった。

 さてこの新首相就任が決まったダウトール氏だが、彼はどのような人物なのであろうか。もう20年ほど前に彼に初めて会った時、彼は大学の教授であり、小さなイスラム研究所をイスタンブール市内に持っていた。述べるまでも無く、彼には彼の能力を買った、スポンサーが付いていたのであろう。

 彼は学者らしくにこちらの質問に、静かに答えてくれたことを、今でも忘れない。そして、その後研究所に近いトルコ・レストランに私を誘い、ご馳走してくれた。当時のトルコ経済はハイパー・インフレの時期であったことから、無理な出費をさせてしまった、と反省したものだ。

 その後、彼がエルドアン内閣の誕生と共に、外相に就任することになった。彼はそれまでの静かな教授のイメージとは異なり、ずばりものを言うタイプの、外相に変貌して行った。それはあるいは教授であったことから、国際的あるいは国内的な政治の場での、駆け引きを知らなかったからかもしれない。

 彼のイスラム史やイスラム法に関する知識は、外相としての役割に大きくプラスに働いたものと思われる。このため、周辺諸国らは尊敬され、彼の名声が広まっていった。外相に就任後彼が躓いたのは、『オスマン帝国復活』のニュアンスを含む、発言をしてしまったことであろう。これはトルコ国民の多くの本音なのではあるが、国内外から批判を浴びている。

 ダウトール外相の外交視線は善隣友好であり、初期にはそれが成功していたが、エルドアン首相の周辺諸国に対する介入や、周辺諸国首脳に対する激烈な非難の発言が、次第に関係を悪化させていった。

 ダウトール首相は首相就任後、どのような政策を展開していけるのであろうか。単なるエルドアンのイエス・マンになり、彼の政策を遂行するだけなのか。あるいは自分の考えを前面に打ち出し、実行していくのか。いまの段階では前者の可能性が強いようだが。