トルコのエルドアン首相は、ある意味で凄腕のエンターテナーのようだ。トルコ人に聞いてみると、エルドアン首相の演説は聴く人を引き付け、興奮させるというのだ。そのために多くの人が、彼の汚職スキャンダルを耳にしても、彼の魅力に引き込まれてしまうらしい。
その結果、彼はトルコ政治を自分の好きなように動かしてきたが、冷静に見ていた人士にとっては、許せるものではなかったようだ。近く辞任が決定しているギュル大統領も、その一人であり、彼はついにエルドアン首相に、反旗を翻し始めたようだ。
エルドアン首相は何事につけ、新しい変化を最大限に利用してきていた。政府内の人事に始まり、他国との関係の変更についてもしかりだった。そして、彼のエンターテイメント技術により、エルドアン首相は国民を魅了してきたということだ。
近くトルコではエルドアン首相の辞任に続き、新首相人選が発表される予定になっていた。エルドアン首相はぎりぎりのところまで引き延ばし、突然発表し国民を興奮させることを考えていたのだ。彼は8月28日頃に新首相を発表すると言っていた。
しかし、ギュル大統領がこれまでのしきたりを破り、エルドアン首相の発表に先立ち、新首相にはダウトール外相が決まっていると発表したのだ。この結果、エルドアン首相が得意なサプライズは消えてしまった。
このことを発表する場で、ギュル大統領の夫人が暴露発言をしたようだ。それをギュル大統領は阻もうとしたが、夫人はもっと話させろと言ったらしい。夫人は『夫は多くの事を話したいのだが我慢している。』と言ったということだ。つまり、それだけギュル大統領はエルドアン首相に、遠慮していたということであろう。その遠慮がどうやら終わりの時を迎え始めたようだ。
今度新首相に就任するダウトール外相は、そもそもギュル大統領が与党に紹介し、外相の座に就任で来ていたのだということを、ギュル大統領は暴露したということだ。ダウトール外相が首相就任後、誰を財相に就任させるのかということが問題になっている。現在のシムセク財相はヨーロッパ諸国で、信頼が篤い人物のようだが、彼はエルドアン首相に敵対する、グレン氏が率いるヒズメト組織の理解者だということだ。
もし彼が財相のポストに残留すれば、エルドアン新大統領とダウトール新首相との関係が、複雑なものになるかもしれない。もし財相が留任しなければ、トルコとEUとの経済関係は悪化し、トルコからEUの投資が、引き上げられる可能性もあろう。