『大丈夫かエルドアン首相のサウジ国王口撃』

2014年8月 5日

  いま、トルコのエルドアン首相は彼に対抗できる人物は、いないと考えているのであろうか。トルコ国内では警察、検察、弁護士、裁判官、ジャーナリスト、文化人と、軒並みに彼の気に食わない考えを持つ者を更迭していたが、最近ではそれだけでは気が収まらないのか、彼等を投獄し始めている。

  現段階ではトルコの警察、検察、裁判官、弁護士などからは、強い反発は生まれていない。あるいは締め付けが強いために、それが出来難いのかもしれない。つまり、大統領選挙を控えたいま、エルドアンはやりたい放題、まさに独壇場という感じだ。

そればかりではない。彼の考えと相いれない外国の要人までも、血祭りに挙げられているのだ。サウジアラビアのアブドッラ―国王に対しても、ガザ問題でイスラエルを非難せずに、ハマースをテロ組織と言ったと非難している。

サウジアラビアばかりではなく、アラブ首長国連邦に対しても、同様に敵対的な立場をとっている。加えて、クウエイトもそうであろう。これら三国はいずれも、ムスリム同胞団に対し厳しい対応をしている国々だ。ハマースはムスリム同胞団の組織でもある。

アラブ人に言わせれば、そもそもサウジアラビアとトルコとの間には、19世紀以来オスマン帝国とサウジアラビアのワハビー派集団との間に、争いがあったということだ。トルコは学派ではハナフィー派に属しているのだ。

エジプトがオスマン帝国の強い影響下にあった時代、ムハンマド・アリー朝にはエジプト軍がオスマン帝国に味方して、アラビア半島に攻め込んだこともある。だが、いま起こっていることは、それとは別ものではないか。

エルドアン首相の罵詈雑言は、サウジアラビアの国王に限ったものではなく、アメリカやヨーロッパ諸国に対しても向けられている。国内外の彼とは相いれない人士に対する暴言と、国内での取り締まりは、専制君主並ではないのか。

問題はこうした彼の言動が、近隣諸国との関係を悪化させないか、ということだ。エジプトとの関係はムスリム同胞団を巡って、最悪の状態にあるし、サウジアラビアとの関係も同様だ。

今年のトルコの貿易はシリアを除いて、軒並みに減少傾向にある。大産油国のサウジアラビアや、アラブ首長国連邦との関係をこじらせた場合、トルコ締め出しも起こり得る。そのことで泣くのはトルコの業者であろう。

『口は災いの元』、エルドアン首相の最近の言動はまさにそれであろう。良好な関係であったエジプト、シリア、イラクとの関係は、最悪の状態になっている。それに湾岸三カ国を加えるつもりなのか。