シリアの内戦がもう3年も続いている。そのなかではシリア人によって構成された、反シリア・グループの活動があった。その後、ヌスラなるイスラム原理主義の外人部隊が、残虐な行動で世間の目を引いた。
その次にシリアで知られるようになったのは、やはりイスラム原理主義のISILだった。この組織は現在、イラクを中心に戦闘を続けているが、シリアから完全に手を引いたわけではない。シリアにも戦闘地域を、確保しているのだ。
リビアではハフタル将軍を始めとする、世俗派に対抗して、ムスリム同胞団系のイスラム原理主義戦闘集団が、活発に戦闘を展開している。
加えて、パレスチナのガザ地区では、ムスリム同胞団の別働隊であるハマースが、イスラエルとの間で厳しい戦いを、展開している。こうした状況に対し、中東のイスラム各国はそれぞれの、反応を示している。
サウジアラビアやクウエイト、アラブ首長国連邦などは、冷めた目でイスラム原理主義の戦いを見ているが、イランやトルコなどは高みの花とでも言うのだろうか。ハマースに支援の言葉を送ってはいるが、もう一歩踏み込んだ行動には、出ていないようだ。
さて、アラブ世界のイスラム原理主義運動の、総本山ともいえるエジプトのムスリム同胞団は、いま何を考えているのであろうか。述べるまでも無く、ガザ地区の戦闘には参加をしたいし、支援物資も送りたいであろう。
しかし、昨年ムスリム同胞団政権を打倒したシーシ体制は、そうしたムスリム同胞団の活動を、全面的に封じている。たとえムスリム同胞団がガザに支援したくとも、動けない状態にあるのだ。
厳しいエジプト政府の監視の下では、ガザ地区で起こっている非人道的なイスラエル軍の攻撃に対し、ムスリム同胞団は反対のデモすら、起こしえない状態にあるのだ。そこまでムスリム同胞団は、厳しい状態に置かれているのだ。
いまエジプトのムスリム同胞団に出来ることは、エジプトとガザの国境をまたいで、シナイ半島のガザ近くに展開するエジプト軍に、テロ攻撃を加えることであろう。ただそれをやり過ぎれば、エジプト政府はハマースに対して、厳しい対応をすることになろうし、エジプト国民からも支持を得られなくなろう。
いまのエジプトのムスリム同胞団に残された戦術は、忍耐の一語に尽きるのではないか。エジプト政府はIMFなどからの圧力もあり、基本生活物資に対する政府援助を削減している。そのこともあり物価は上がっているのだ。
そのことで国民の不満が頂点に達するのを、待つしかなかろう。その日はあまり遠くないかもしれない。