既に30年以上も戦い続けてきた、トルコのクルド人抵抗組織PKK(クルド労働党)が、突然のようにトルコに対する武力闘争を、放棄する宣言を出した。これはイムラル島にある刑務所にいる、PKKのリーダーであるアブドッラ―・オジャラン氏に会見した、側近たちによって発せられたものだ。
PKKは1984年8月以来、今日までクルドの分離独立を掲げて、戦い続けてきたが、既に4万人を超す犠牲者がトルコ側に出ている。戦闘が始められた頃、PKK・シリア関係は良好で、シリア国内に訓練基地と組織を持っていた。
しかし、その後シリアとトルコとの関係が改善し、トルコの圧力もあり、アブドッラ―・オジャラン氏はスーダンにいるところを、トルコ側によって逮捕され、収監されて今日に至っている。
何故アブドッラ―・オジャラン氏はいま、トルコとの戦闘終結宣言を、したのであろうか。PKK側はトルコ政府がクルド語による教育を認めたことや、地方自治を認めたことなどを、その理由にあげている。
しかし、事実はその理由とは、少し異なるのではないか。このとろろトルコがISILに対して、秘かに支援していた理由について、PKKを打倒するために、ISILを使う気だったと言われている。
つまり、いまシリアやイラクで派手に戦闘を展開している、ISILをトルコは支えることにより、その見返りとして、トルコ国内のPKK 組織を、撲滅させようということのようだ。
そうなれば、PKKはトルコ軍と、ISILの双方から攻撃を受け、苦しい戦闘を展開しなくてはならなくなる、ということだ。そこでトルコとの戦闘終結宣言を発することにより、トルコ軍との戦闘をやめ、トルコ政府の心証を良くして、ISILを使った攻撃も避けよう、ということではないのか。
確かに、数年前からアブドッラ―・オジャラン氏は、武力闘争を止めたい、と言い出してはいたが、その事については、PKK内部で戦闘継続派と、停戦派とに意見が分かれていたようだ。
ここにきて、PKK内部の意見対立が解消し、戦闘終了に向かうのは、やはりトルコ軍とISIL双方から、攻撃を受ける危険性を、熟慮した結果ではないのか。一説によれば、イラクのクルド自治政府には、ISILとの戦いから、大量の武器が欧米によって、供与されているという話がある。
そうした状況を考えれば将来、クルド自治政府との共闘を考えても、不思議はなかろう。とりあえず今のところは、停戦するということか。クルド地区の石油収入の一部を、自分たちも受け取りたい、ということもあろう。