ISIL(イラク・レバント・イスラム国家組織)が、シリアで戦闘を展開し、次いでイラクでも戦闘を始めた段階で、ISILはほとんど抵抗らしい抵抗を受けずに、快進撃していた。
何が彼らをそれだけ、強力なグループにしているのであろうか、と誰もが不思議に思い、その理由を探していた。一つはイラクの場合、マリキー政権(シーア派)に対するスンニー派国民の、反発によるものと思われていた。
つまり、それまでのシーア派政権の圧政に耐えていた、イラクのスンニー派国民が、ISILの展開を歓迎していた、ということだった。もちろん、同じスンニー派がほとんどを占める、クルド自治区についても、同じような判断がなされていた。
しかし、最近になってどうもこの構図では、動いてないのではないか、と思われるように状況は変化してきている。それはISILとクルド自治区のペシュメルガが、戦闘を展開しているからだ。
同じように、他の地域でもスンニー派イラク人と、ISILとの間に戦闘が勃発している。シリアではイラクに近い北部の街で、土地の部族とISILとの間で、激しい戦闘が展開され、ISILが追い出されたという情報もある。
つまり、いままでのISILとスンニー派の、共闘という構図は、完全に崩れ去ったということであろう。それがどうして起こったのかについて、推測してみることにした。
最近、ISILの動きで目立ってきていたのは、次のような点だ。
1:ISILが軍資金調達のために、石油施設を占領しようとしているし、既に一部は彼らの手に落ちている。
2:支配地域ではイスラム原理主義が住民に押し付けられている。
3:ISILのリーダーが『コーランに誤りがある』と言い始めている。
ISILが石油施設を支配し、石油を密輸し始めたことは、スンニー・シーアの別なく、受け入れがたいことであろう。したがって、ISILによる石油支配は、許せないという、明確なISILに対する反対の立場が、出てきたということだ。
ISILによる支配地域における、イスラム法(彼らの判断による)の徹底は、住民を苦しめている。例えば、女性に対する強制的な割礼の施行、服装に対する強力な指導、そして強制的なISIL兵士との結婚などだ。これはとても受け入れられないことであろう。
そして最近になり、バグダーデイISIL 議長は『コーランに誤りがある』と言ったらしいのだ。それはムスリムにとって、受け入れられるものではない。そうしたなかから、バグダーデイの出自に関する。種々の噂が流れ始めてもいる。
ISILの独り舞台の時期が、そろそろ終わりを告げるのかもしれない。そうあって欲しいものだ。