ISIL(イラク・レバント・イスラム国家、後にISイスラム国家に変名)組織については、早い段階からアメリカのブラック・ウオーター社などと同様の、軍事支援会社ではないのかと疑ってきた。
突然登場し、破竹の勢いで進軍し、そのメンバーもうなぎ上りに増加していることは、異常としか言いようがない。それが可能になるためには、二つあるいは三つの要素が、必ず必要だと考えるのが常識であろう。
第一には、多数の戦闘員を食わせ、給与を支払うということは、莫大な資金がいるということだ。それを誰が担当してきたのかは、述べる必要も無かろう。
第二には、ISILの戦闘員が使用する武器を、誰が提供したかということだ。そのほとんどはトルコ経由で、彼らの手に渡っていたと報じられているが、誰が調達し、代金を支払っていたのか。
第三には、誰が宣伝を担当し、ISILの大勝利を煽ってきたのかということだ。宣伝戦は重要であり、それゆえに支援金が集まり、義勇軍も集まるのだ。そのことを何処の国が担当したのかについては、述べるまでも無かろう。
賢い読者は私が名指ししなくとも、おおよその見当がつこう。一応一般的に伝えられる情報から、参考までに支援国を挙げてみよう。サウジアラビア、カタール、トルコ、イスラエル、そしてアメリカでありイギリスだ。それが事実か否かについては、魔法が時間の経過という術によって解け、いずれわかるであろう。
これらISILの支援国とされる国々に、最近異変が起こっている。第一にあげられたサウジアラビアは、ジェッダでシリア支援会議なるものを開催し、テロに対する厳重な対応を討議した。この会議に参加したのは、エジプト、ヨルダン、カタール、アラブ首長国連邦、そして主催国のサウジアラビアだった。
トルコでは、野党CHP,MHPなどが、エルドアン首相のISILに対する支援を、大きく取り上げ非難している。その問題が大きくなっていけば、新大統領に就任後、エルドアン氏は相当厳しい立場に、立たされるかもしれない。
最近になって、アメリカやイギリスもISILへの対応で、あわて始めているようだ。アメリカの国防省高官たちは口々に、ISILの撲滅が容易でないと語り、現代社会の癌のようなものだとまで言っている。
つまり、ISILは放置すればますます拡大し、空爆しても息の根を止めることはできず、地上軍を派兵すれば相当の犠牲と、資金を必要とするということだ。誰かがパンドラのア箱を開けたようなもので、収拾がつかないと語っていたが、まさにその通りであろう。
ISILとブラック・ウオーターとの根本的な違いは、帰国後にそれぞれの国でテロ活動を活発化させる、危険性が高いということだ。ISILの戦闘員の多くはムスリムであり、彼ら以外のメンバーも皆社会に対する不満を、強く抱いている者たちなのだ。
イラクやシリアで暴れさせておく分には、自国の利益になる部分もあるが、帰国後に自国内で暴れられたのでは、手がつけられない存在になる危険性がある。今後ISILにどう対応していくのかということを、欧米諸国はみな真剣に考え始めたようだ。
それではISILはフランケンシュタイン、あるいは魔人のような存在かと言えばそうでもなかろう。欧米諸国や湾岸諸国が資金と武器の提供を止めさえすれば、一気にその力は落ちるのではないのか。
ISILがいま考えている策は、まさにその点にある。シリアやイラクの油田地帯を占領してしまえば、独自に資金は手に入れられるということだ。しかし、それとても思うようにはいくまい。ISILが盗掘した石油は、国際的に購入禁止にすればいいのだ。
これらの対応策は、容易なようであって、現実にはそうでもないかもしれない。それは欧米諸国や湾岸諸国の利益と、どうからんでいるかということに、難しさがあるようだ。