時を同じくして、イギリスとカナダの情報専門家が、ISLの今後の展開について、不安を述べている。ISILがイラクやシリアで戦闘を展開している分には、両国にとって大きな問題ではないのだが、その戦闘員が帰国した場合のことが、両国の専門家には不安なのだ。
イラクやシリアに渡った、イギリスやカナダから参加した戦闘員は、国際的なテロリストのネット・ワークと武器や戦闘に関するノウハウ、そして実戦経験を積んで帰国するのだ。
その戦闘員が帰国して、自国内でテロを始めた場合、大きな危険が予測されるからだ。イギリスからイラクやシリアの戦闘に参加している者、戦闘に参加した経験を持つ者の数は、500人前後といわれている。カナダからも100人を超す男女の戦闘員が、イラク・シリアの戦闘に参加していると報告されている。彼らは戦闘技術だけではなく、リクルートのノウハウも学んでいるのだ。
彼らが帰国後に自国内でリクルート活動行われれば、たちまちにして戦闘員の数は増えるということだ。フランスからは700人、アメリカからも参加しているし、ドイツからも400人前後が参加しているし、オーストラリアからも200人前後が、参加しているということだ。
加えて、マレーシアやインドネシアからも、参加しているという情報もある。多分フィリピンからも参加しているものと思われる。ISILはいまや、まさに世界的な問題になっている、ということであろう。
いま危険なのは、アメリカが人道的目的から、ヤズデイ人マイノリテイを救うという目的で、イラク北部のISILの拠点に、空爆を始めたことだ。アメリカの空爆の本当の目的は、アメリカ人を保護することにあるらしいのだが、それも疑わしいのではないか。
アメリカはイラクへの空爆を行っても、ISILを打倒することは出来ず、空爆を次第に拡大していき、最終的には地上軍を展開しなければならなくなるかもしれない。それに加え、アメリカはシリアでも空爆を、始めそうな模様だ。そうなれば、アメリカはイラクとシリア両国で空爆を展開し、最終的には地上軍を両国に派遣するのだろうか。
イギリスの専門家はISILの戦闘に、欧米の若者が参加したがるのは、これらの国々では、生きることの目的が不明確なことに加え、社会的疎外、政府への不信、自分のアイデンテティが不明確であることによろうと解説している。
他方、イラクやシリアの戦闘には、明確な参加の理由がある。それは『マイノリティのスンニー派が弾圧されている』という現実だ。こうした状況を踏まえ、アメリカはISIL対応に知性を使うべきであり、長期的対応を考えるべきだ、というのがイギリス・カナダの専門家の共通した意見だ。