『トルコ・ISIL昨日の友は今日の敵』

2014年8月15日

 

 この欄で何度も報告してきたように、トルコのエルドアン政権はいま、イラクやシリアで大暴れしている、IS(ISIL)の支援をしていた。最初の段階では、ISへの参加戦闘員の自国領通過を認めてきたし、武器のシリアやイラクへの搬入も、認めてきていた。

 そればかりか、シリアやイラクの戦闘で負傷したISの戦闘員が、トルコ領内の病院で治療を受けるということも、行われてきた。つまり、ISがシリアやイラクで猛威を振るえたのは、トルコの支援があってのことだった、ということになるのだ。

 その辺の事情を、ISの若手司令官が明かしている。彼の語るところによれば『我々はトルコからの武器の供与が必要だった。武器はトルコの国境を通じて、入手していたのだ。

ISの幹部が負傷した場合トルコの複数の病院で治療を受けてもいた。戦闘が始まって最初の頃、ほとんどの戦闘員はトルコを経由して、戦場に到着していた、もちろん武器もその他の必需品も、全てはトルコ経由だった。』。

しかし、最近になって状況は変わってきたようだ。件の若手司令官が語るところによれば『イラクで強くなったために、トルコに頼る必要がなくなってきている。イラク国内で十分な武器を入手できるし、シリア国内でも買うことが出来るようになった。』ということのようだ。

この状況変化はこれから何を生み出していくのであろうか。イランの情報筋や軍事筋の分析によれば『トルコはフランケンシュタインを作ってしまった。』ということのようだ。つまり、トルコが支援して育てたISILは、トルコに牙を剥き始めた、ということであろうか。

トルコがISILを育てた裏には、このISIL組織を使って、自国内のクルド撲滅を図りたかったからだ、と言われている。トルコは当初、シリアで誕生したクルド組織PYD (クルド民主連合等)と、協力関係にあった。

シリアの内戦でPKK(クルド労働党)が、シリア国内に拠点を持つことを、危険視したからであろう。それでPYDと協力し、ISILも支援したということだ。ISIL支援の秘密会議に、トルコが参加していたことや、軍事訓練を施していたことも、関係者の間では知られている。

これから先、アメリカ軍やイラク軍によって、ISがイラクで追い詰められていけば、ISは多分トルコ領土を、逃避先と考えるのではないか。そうなれば、トルコはそのコントロールに、苦慮することになろう。