イラクでの蛮行でIS(ISIL=イラクレバントイスラム国家組織)は世界的に、知られる組織になった。その残虐ぶりは目に余るものがある。敵の首を切り落とす、敵と考える側の婦女子を捕まえては、レイプし殺害する。そして最近では、ヤズデイの女性を、世界中に売りさばいている、という情報も流れてきている。
ヤズデイの女性たちの値段は、500ドルから43000ドルだということだが、何故そうも大きな値段の開きが、あるのであろうか。そして誰が彼女たちを買っているのであろうか、という疑問が沸いてくる。
ヨルダンにあるシリアの難民キャンプで、13歳から20歳程度の女性たちと臨時婚(買春)したのは、湾岸の70前後のお年寄りたちだった、と報告されているが、ヤズデイの悲劇でも湾岸の住民が、買っているのであろうか。
確かにいまの時期は、金さえあれば法はあっても、無きに等しい状態であろう。若い女性の家族たちも、自分たちが生きていくためには、家族の若い女性を、犠牲にすることもあろう。
しかし、湾岸の住民たちのこの世の春は、案外続かないのかもしれない。レバノンのヘズブラの、リーダーであるナスラッラー師が、これからのヨルダンと湾岸諸国が直面するであろう、危険について警告している。
ナスラッラー師はIS(ISIL)がどんどん大きくなり、モンスターのようになっていると語り、そのISの危険はサウジアラビア、クウエイト、アラブ首長国連邦、その他の湾岸諸国とヨルダンにも、及ぼうと語っている。
ナスラッラー師が主張する言葉の根拠は、これらの国々には社会的な不正義が存在し、これらの国々には、ISのような組織を受け入れる、社会的素地があるというのだ。確かにこれらの国々のなかには、イスラム原理主義者が少なくないし、彼らはこれまで、ISその他のイスラム原理主義テロリストの、スポンサーにもなってきている。
ISはその名が示すように、イスラム国家を樹立すると語っており、その思想には国境は存在しない。パキスタンやアフガニスタン、遠くはフィリピンや中国までも、含むという考えのようだ。
確かに、最近では中国の新疆ウイグル地区でも、イスラム原理主義者による、テロが増加していると言われているし、ウイグルの若者がシリアのヌスラ戦線側に参加して、戦っていたという情報もある。
このISの動きは、何もスンニー派の国に限ったことではない。シーア派のイランもイスラム原理主義の国ではあるが、思想を異にするために、強い警戒心を抱いているようだ。
一説によれば、イランはイラクとの国境地帯に、3万人の兵士を貼り付けているということだ。果たして冷戦状態にあるイランとサウジアラビアが、ISの危険性の前に、連帯するという状況が、生まれて来るのであろうか。