イラクで現在起こっている状態を、内戦とみるべきか戦争と見るべきかについては、意見の分かれるところであろう。ただ言えるのは、現在起こっている戦闘は、外国から侵入したISIL(イラク・レバント・イスラム国家組織)と、イラク政府軍の戦いであり、これは内戦とは呼べないのではないかということだ。
イラクのシーア派政権に反発する、スンニー派の戦いであり、それをあたかもISILが支援しているように報じられているが、事実はそうではない。イラクのスンニー派の中からも、ISILに対し対抗するグループが、幾つも誕生しているようだ。
もちろん、この手の話は宣戦合戦の意味合いがあるわけで、一概に信用できるものではないのだが。一部報道によれば、イラク北部のサラーハッデーン地域のスンニー派が、反ISILで立ち上がり、攻撃を始めているということのようだ。これはイラク政府軍のISILに対する攻撃を、側面からサポートすることになっていよう。
現在イラクで展開しているISILの攻撃は、アメリカが背後から支援し、サウジアラビアが最大のスポンサーとされているが、ISIL側はイラクの油田地帯を支配し、1バーレル10数ドルで売ることにより、戦費を獲得しているのだと言っているが、それでは思うようにはいくまい。
他方、イラク政府側にはイランとロシアが付いている。ロシアはイラク政府に兵器を輸出し、イランは情報と兵員で協力しているようだ。当然のことながら、双方は直接間接イラク問題への関与を非難しあっている。
最近ロシアが発表した兵器輸出額は、400億ドルを超えたと言われているが、それはエジプトへの輸出に加え、イラクへの輸出も積み重なった結果であろうか。エジプトの場合は、サウジアラビアがその代金を、全額支払ったと言われている。
先日お伝えしたヨルダンで開催された、反イラク側の秘密会議の結果、反政府勢力が攻勢に出ていると伝えられているが、その限りではなかろう。イラク政府軍は戦闘機も駆り出して、ISIL側を攻撃し始めているのだ。
こうして考えてみると、かつてシリアの内戦で反政府側が優位にあった時、アメリカがアサド政権に対して、軍事攻撃を加えるという話が出たが、しりすぼみに終わり、今ではアサド政権側が優位に立っている。
それと同じように、イラクの場合も時間の経過によって、ISIL側が不利な戦いに追い込まれる可能性があろう。その場合、シリアからイラクに移動したISILは、何処の国に向かうのか興味深い。そのなかには、ISILを裏から支えているトルコやサウジアラビア、そしてヨルダンが、ターゲットになる可能性もあろう。